千の夜と千の昼

 

12/24

 

クリスマスイヴの夜。

 

 

 

数日前の戦いに於て精霊手のヒーローの出現により幻獣は世界からいなくなり

 

世界は50数年ぶりに平和という安穏の日々を手に入れ

 

 

 

我5121小隊では物資が少ないながらも、ささやかなクリスマスパーティーを開催した。

 

戦争終結直後だった事もあり皆疲れ果てていたものの大さわぎで。

 

そして…その日はその中でも何故か瀬戸口が一番浮かれていた。

 

ちびりちびりと酒を舐める様に飲む舞を捕まえて

 

「ほぉら姫さん飲みが足りないよ。ホラこれ一気ね!芝村ならこれぐらい平気だろ?」

 

ぐい。と酒瓶を舞につきつける

 

「む。・・・そうか?芝村はどんな挑戦も受けてたつ!んぐんぐんぐんぐ・・・」

 

ぱたり。顔を真っ赤にして突然倒れる舞。

 

「うわぁあああ瀬戸口!舞になんて亊するんだよっ!舞はお酒弱いんだからぁ!」

 

倒れた舞に気づき駆け寄る速水

 

「そうか?そりゃ・・・悪かった」

 

素直に謝る瀬戸口の背後から

 

「不潔ですっ!!!瀬戸口君!!!」

 

お約束の様に瀬戸口に食って掛かる壬生屋に瀬戸口はにんまり微笑むと

 

「お〜や〜?お前さんも飲みが足りない様だな壬生屋。戦いは終わったんだから飲め飲め!」

 

壬生屋を捕まえて無理矢理酒を飲ませる瀬戸口。

 

「ちょっ!!!瀬・戸・うぐっ・・んぐんぐんぐんぐ・・・・」

 

ぱたり。舞に続けて真っ赤な顔で倒れる壬生屋。倒れた二人を見下ろしながら瀬戸口が

 

「・・・お前さん達酒弱いのな。ま。俺の相手するには1000年は早いがな」

 

ケラケラ笑う瀬戸口。やたらとハイテンションだ。

 

速水が瀬戸口が飲んでる酒のラベルを見るとアルコール度数50度と書いてある・・・

 

恐るべしのんべぇ瀬戸口!!速水は瀬戸口を睨みつけると

 

「誰も相手になんかしてないじゃない!瀬戸口がお酒強すぎるんだよぉおお〜〜〜舞〜舞〜!大丈夫?!!壬生屋さんも!」

 

その騒ぎにののみが瀬戸口に走り寄ってきて、倒れた舞と壬生屋の顔を心配そうに覗き込む

 

「ふぇえええ?まいちゃんとみおちゃんどうしたんですかぁ?」

 

瀬戸口はののみに、にっこり微笑むと

 

「ん?お姫さま達はおねんねだ。ののみもねんねするか?」

 

「うんっ!ののみも、ねんねするー!」

 

無謀にもののみにも酒を飲ませようとする瀬戸口に

 

「瀬戸口!ののちゃんだけは駄目だからね!!!子供なんだからッ!」

 

怒気を含んだ声音で瀬戸口を一喝する速水。

 

「へいへい。」

 

「ふぇ?」

 

 

 

 

それにしても…

 

お昼から始まったパーティ・・・だった筈なのに終わったのは夜10時過ぎていて、

 

瀬戸口が舞や壬生屋さんに酒を飲ませて酔いつぶしたりして大騒ぎしてパーティは本当散々だった。

 

皆それぞれに酔っ払ってて家に帰る為に散って行ったのだが

 

僕と瀬戸口はお互いに舞と壬生屋さんを背負ってとぼとぼ帰路についていた。

 

僕が舞をおんぶして帰るのは恋人だから当たり前の亊で。

 

瀬戸口は壬生屋さんを酔わせた罰として責任持って送り届ける様に皆に言われていた。

 

が。初めは壬生屋さんを送るのを嫌がっていた瀬戸口だったが、

 

若宮さんが壬生屋を送るって話が出た途端に

 

「イヤ!飲ませた俺の責任だから」とか言って今度は壬生屋を送るって聞かないし・・・

 

も〜本当に素直じゃないんだから。瀬戸口ってば。

 

 

と。言っても僕とののちゃん以外は相当飲んでいたので皆人の介抱など出来る状態ではなかったけど。

 

それにしても瀬戸口はお酒強いよなぁ〜しみじみと速水は思う。

 

かなり飲んだ割には多少酔ってはいながらも壬生屋さんを背負ってしっかり歩いている。

 

瀬戸口ってウワバミなのかなぁ?と、速水が内心考えていると・・・

 

 

 

「おーし。着いたぞ」

 

瀬戸口がとあるアパートで立ち止まった。

 

「じゃあ。今日は瀬戸口の家にお世話になろうかな?」

 

「ああ。仕方ないだろうな。もう遅いし、お姫さま達泥酔してるからな。・・・ちょっと待ってろ。すぐ部屋の鍵開けるから

 

「じゃあ壬生屋さんの事はよろしくね」

 

と言って部屋の前でUターンする速水

 

「へ?お前さんらも泊まるんだろ?」

 

「何でイブに君達と一緒にいなくちゃいけない訳?」

 

「そりゃあそうだが・・でも・・みっ・壬生屋は?」

 

「君ん家泊めればいいじゃない。」

 

速水の提案を聞いて言葉につまる瀬戸口。

 

「オイ・・・そりゃあ・・・マズイだろ?。」

 

「どうして?」

 

ぽややんと聞き返した速水に瀬戸口は渋い顔を向けて

 

「若い男女が・・・二人きりだぞ?」

 

それを聞いて笑いだす速水

 

「アハハハッ☆大丈夫だよ。」

 

焦る様に瀬戸口。

 

「なんで大丈夫なんだよ!?」

 

キョトンとした顔で速水。

 

「だって・・・瀬戸口は壬生屋さん嫌いだし。二人共仲悪いじゃない。」

 

速水の指摘にぐぅの音も出ない瀬戸口。

 

「う。そりゃあ・・・そうだが。」

 

「じゃ。大丈夫だね☆」

 

速水は舞を背負い直すとさっさと帰ろうとした。

 

その速水の腕を掴む瀬戸口。

 

「おっ・・・おい!何かの間違いって事もありうるだろぅ?」

 

尚も引き留めようとする瀬戸口に速水は振り向かないままで

 

 

「・・・折角のイヴなんだ。これ以上僕と舞の邪魔をしたら、いくら親友の君でも許さないよ?」

 

青の速水の本気の殺気のオーラを感じ取りあとずさる。

 

「・・・〜〜〜分かった。分かったよ。怖いなぁバンビちゃんは。」

 

お手上げとばかりに降参のポーズを取る瀬戸口。

 

すると速水は瀬戸口に振り返ってにっこり笑うと

 

「君もイブ位は素直になったら?棚ボタだろ?本音は」

 

「!なっ///////」

 

顔を赤らめる瀬戸口。

 

 

「図星だね☆じゃ行くね。」

 

速水の多目的結晶が光りテレポートが作動する。

 

「おっ・・オイ速水!!!」

 

 

 

瀬戸口の手が虚しく空を切り

 

「行っちまいやがった・・・」

 

後には泥酔した壬生屋を背負った瀬戸口がアパートのドアの前で途方に暮れた・・・

 

実際の所(速水にはそう見えなかったらしいが)自らもかなり酔っている上に、今更学校に戻る訳にもいかないし。

 

かと言って壬生屋の家も分からない・・・さてどうする?

 

言い逃れ出来ない絶体絶命の大ピンチだぞ?

 

と悩んでいたら、突然背後から

 

「クシュン・・・」

 

どうやら壬生屋がクシャミをした様だ。

 

「今日はかなり寒いもんな・・・」

 

南国とはいえ熊本の冬は本州となんら変わらない。

 

南国だから冬場も温かいと思われがちだが、宮崎や沖縄程は温かくはないのだ。

 

だからこの時期はとても寒い・・・となれば・・・

 

 

視界に白い物が目に入った

 

「お。雪か・・・」

 

 

白い雪が壬生屋の髪に舞い落ちる・・・

 

まるで桜の花弁の様に・・・壬生屋に舞い降りる雪の花弁

 

はるか昔の彼の人を思い起させる・・・

 

愛しい愛しい彼の人を

 

今は無き樹齢1000年の阿蘇の桜の大木の下で微笑む姫巫女

 

『祇園・・・私の可愛い童子。』

 

 

 

俺も・・・往生際が悪い・・・か

 

「しょうがないな・・・」

 

溜息をつくと

 

「壬生屋。お前さんも不運と思ってあきらめろ。」

 

苦笑いしながら鍵を開け家に入る。

 

 

部屋に入るとまず靴を脱ぎ、壬生屋の靴も脱がせ、それから電気をつける

 

8畳1Kの部屋だ。生活感の漂わない無機質な感じの部屋。

 

 

壬生屋をそっと窓際のベッドに降ろす。

 

「うう〜ん・・」

 

 

「ふっ。人の気苦労もしらないでこのお嬢さんは・・・」

 

思わず笑みがこぼれる

 

「おっと。コートは皺になるから脱がせないとな・・・」

 

コートを脱がそうとして手が止まる。

 

赤のスウェードの服から覗く豊かな胸の谷間に

 

顔を赤くさせて瀬戸口は

 

「///////拷問だ・・・」

 

と。つぶやいた。

 

 

 

 

 

 

・・・

 

ふと気がつくと見知らぬ部屋にわたくしはいて・・・

 

「此処は・・・?」

 

朦朧とした意識で記憶を手繰る・・・

 

昨日は確か・・・小隊の皆さんとパーティをして・・・それから・・・

 

ううっ・・・頭が痛い。。。

 

するとその考えを打ち消す様に隣から声が聞こえた

 

「う〜〜〜〜んっ・・・」

 

いかにも聞き覚えのある男性の声に壬生屋は身体を固くする

 

「え?だっ!誰!?」

 

自分のすぐ側が温かく人が隣にいるのが分かる。

 

ベッドの上でそっと身じろぎしておそるおそる振り返ると

 

そこには瀬戸口君が眠っていて・・・・・・・

 

!!!!!!!

 

瞬間頭の中が真っ白になる。

 

わわわわわ・・・・わたくしは何故こんな所に・・・

 

ままままさかわたくし昨日瀬戸口君と・・・まさか???

 

頭の中が二日酔いも含めてぐわんぐわんして気が動転していたら

 

壬生屋の一連の行動で起きたのか瀬戸口が壬生屋に気がつき笑いかける

 

 

「おはよう姫さん!・・・よく眠れたかい?」

 

自分に向けられる瀬戸口の見たこともない極上の優しい笑顔に惚けた顔をする壬生屋

 

・・・信じられない。瀬戸口君がわたくしにこんな表情するなんて・・・

 

咽迄出かかった悲鳴をごくりと飲み込む。

 

これは・・・夢の続きなの???

 

昨日見た夢では瀬戸口に抱きしめられる夢を見たのだ。

 

 

 

「瀬・・戸口・・君・・・?」

 

「ん?」

 

「あの・・・此処は?どうしてわたくしは此処にいるのでしょうか?」

 

「俺のアパートだよ。覚えてない訳?」

 

と、言っても泥酔していた壬生屋が覚えている筈もないが

 

「え・・・ええ。」

 

「つれないねぇ壬生屋。昨日はあんなに激しかったのに。」

 

 

 

「ええっ!?はっ激しい???」

 

柳眉をはね上げて耳朶迄真っ赤にして壬生屋はうろたえる。

 

こーゆうトコが可愛いんだよな。壬生屋は。と内心瀬戸口は思いつつ

 

昨日の亊を思いだしていた。

 

壬生屋を寝かせて自分も横に潜り込んだその瞬間に壬生屋は

 

「不潔でーーーーーーーす!!!」

 

と叫び、その声で驚いてベッドからずっこけた瀬戸口を尻目に

 

おそらく瀬戸口に対する文句であろう寝言を小1時間言い続けたのである。

 

 

随分と激しい寝言言ってたからな(笑)

 

不潔ですっ!とか瀬戸口君っ!とかのいつもの激しい怒り口調。

 

眠っている間迄そんなに想われて俺は倖せ者だよ。

 

「そ・・・それは御迷惑をおかけしました。」

 

何の亊かは分からないが取りあえず謝る壬生屋。

 

「いいや。楽しかったよ。怒ったり笑ったりとコロコロ変わる壬生屋の表情を側で見る事ができて。」

 

 

 

でも壬生屋が最後に呟いた寝言・・・

 

『瀬戸口君・・・』と呟いて涙を流した壬生屋を思わず抱きしめてしまったのは・・・内緒だが・・・

 

あの時は俺もどうかしてたからなぁ・・・

 

 

 

「そうですか・・・」

 

「まぁ今日は日曜だし。ゆっくり寝とけば?」

 

「あ。一応言っておくけど服脱いだのお前さん自身だぞ?暑い暑い言ってポイポイポーイってね。

 

それと冬場で布団が1組しかないのでこーゆう事態になった。スマン。」

 

(本当は押し入れに新品の布団があと1組あったけど・・・それも内緒だ)

 

 

「え・・・・?服???」

 

瀬戸口に言われ自身の姿を改めて凝視する

 

自らはブラジャーにショーツとキャミソール。対して瀬戸口は上半身裸でトランクス一丁。

 

あられもない下着姿で男女が一組の寝所にいるなんて!!!

 

「キャーーーーッ!!!!!!ふ・ふ・ふ・ふふふ不潔ですぅうううう!!!!!!」

 

悲鳴を上げる壬生屋

 

勢い良く布団を胸元にたぐり寄せて涙ぐむ

 

「オイオイ。今ごろ気づいたのか?」

 

もう少し早く気がつくと思ってたので瀬戸口は笑いながら呆れた。

 

起きた瞬間に『不潔ですっ!!!』と言ってひっぱたかれるのを覚悟してたのだ。

 

「だだ・・・だって・・そんな・・・ううっ・・・わたくしっもうお嫁に行けません〜」

 

壬生屋が泣きだした

 

 

瀬戸口はそんな壬生屋を可愛いなぁ〜とか思いつつ、そっと壬生屋の頬に手を差し伸べると

 

顔を近づけてその涙を瀬戸口は舌ですくい取る

 

吃驚して泣きやむ壬生屋

 

「その時は俺がお前さんを貰ってやるから。安心しろ。」

 

壬生屋の耳元で甘く囁く

 

「えええっ!?」

 

「それとも今から契る?」

 

瀬戸口は壬生屋の首筋を唇でなぞりながら更に続ける。

 

「ちっ・・契るだなんて・・そんな・・・・・ふ・・・不潔・・・です。」

 

全身を上気させ瀬戸口から逃げようとする壬生屋。

 

「壬生屋・・・。お前さんにキスしたい。・・・キスしてもいいか?」

 

「あっ・・・そっ・・そ・そんな亊急に言われても・・・んっ」

 

壬生屋が瀬戸口の言葉を遮る前に

 

瀬戸口の優しいキスが壬生屋の言葉を封じ込める。

 

 

 

 

ようやくお前さんに辿り着いたんだ・・・

 

短い様で長かった1000年。

 

千の夜と千の昼を超えてようやく巡り合えた愛しい人。

 

1000年分愛してやるから…

 

覚悟しろよ?壬生屋。

作品紹介・・・つか言い訳チック

ええと。サイトではお初の瀬戸壬生SSです。某同盟樣宛に送ったのですが…内容的にヌルかったので送って大丈夫だったか…かなーり不安です。内容もツッコメばかなりボロが出てくるとは思いますが…壬生屋を背負ったままで降参のポーズは出来ないだろうとか(滝汗)まだまだGPMSS初心者なので勘弁して下さいネ(滝汗)本当はこの「千の夜と千の昼」が初書きSSではないのですが。初物の方はちーと鬼畜入った上にまだ完結していないというとんでもない代物になってしまったので…(苦笑)で。今回のお題目は照れ瀬戸口でございます(笑)タイトルは元ち●せ嬢の曲から。SSはヘボ作ですが感想とか頂けるとメチャ嬉しいです&それは違うだろう!というツッコミもお待ちしてます。(笑)

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