Valentine Kiss

〜チョコより甘い貴方の唇〜

by.櫻

 

 

2月14日 バレンタインデー

西洋のイベントなんて日本人のわたくしには関係ありませんわ、といつもの壬生屋ならそう思うのだが。

今日だけは何故か違っていた。

どうしてかと言うと壬生屋は昨日徹夜して、ある物を作っていたからである。

 

早朝

学校に誰よりも早く登校した壬生屋は、日頃仲のいいブータの姿を見かけて声をかけた。

「ブータ!」

するとブータは壬生屋の姿を見かけると即座に駆け寄って来て壬生屋の足に擦寄る。

ゴロゴロと咽を鳴らすブータの背を優しく撫でる壬生屋。

「ブータ。おはよう御座居ます。」

「にゃ〜〜〜ん(おお!姫。今日もお美しい……しかしなにやら顔色がすぐれぬ様子。お疲れの様だが…?どうされたのじゃ?)」

「ふふっ…今日はわたくし決戦の日ですの」

壬生屋は含羞んで笑ってブータに語りかける。

「にゃ〜んにゃにゃ!(はて?我が姫はなにと戦われるおつもりなのだ?微力ではありますが老い耄れで良ければ爺がお助けしますぞ!)」

ブータのしっぽがピーンと勇ましく立った。

壬生屋はそんなブータを微笑ましく見つめながら

「今日は“ばれんたいんでぇー”と言って、女性がお慕いしている殿方に“ちょこれいと”なる物を渡して愛の告白する日なのです。」

ポッと頬を赤く染める壬生屋。

そんな壬生屋を見たブータ。おお!姫様なんと愛らしい!と思ったのもつかの間。

『好きな殿方』の箇所でピキッと固まり狭い猫の額に皴を寄せた。

「にゃ〜!にゃにゃ(何ですと!ま…まさか姫様…あ…あやつに?)」

内心穏やかでない猫大将。

それもその筈。

壬生屋が誰に好意を寄せているのは知っていた、だが、しかし…その者はあろうことか壬生屋を酷く嫌っていたのである。

ブータが言う『あやつ』、その者の名は瀬戸口隆之。

5121小隊一の伊達男で自称“愛の伝道師”。

昔からの愛称で呼ぶならば、キッドこと祇園童子。

元々は鬼であったが、精神寄生体になり女神の転生を求めて精神寄生を繰り返していて、ブータとは1000年来の旧知の仲であるが。

世界の女性の味方と豪語する瀬戸口が唯一嫌悪しているのが壬生屋であった。

いつも壬生屋が瀬戸口の所為で泣いている場面に出くわしてはブータは猫である小さな胸の内を傷めていた。

 

其れというのも。実はブータは壬生屋が瀬戸口こと祇園童子が探し求めているシオネの転生体であることを知った上で瀬戸口と壬生屋にも黙っていたのだ…

儂があやつにこの事実を伝えれば姫様を愛する様にはなるだろうが…

ブータは、はるか昔を脳裏に浮かべ思い出す…

『猫大将…わたくしはあの方を自分で好きになりますから…知らないフリをしてて下さいね…』

姫巫女の最後に見せた儚げな微笑み。目頭を熱くするブータ。

姫様は自分であやつに恋をすると言っていた。

前世の姫様の最後の願いだったのだ。

いくら今生に転生された姫の為とはいえ…約束を違(たが)える訳にはゆかぬ。

 

猫のブータがまさか前世の自分に仕えていた猫神で、自分と瀬戸口の事で思い悩んでいるなどとは露知らず。

壬生屋は無邪気に微笑むと人差指を唇に当てると小声で

「ブータ、皆には内緒ですよ?実は…瀬戸口さんに…あげるんです」

「にゃー!にゃー!にゃにゃにゃー!!!(やはり!……お…おのれキッドめ!普段姫様を虐げておるのに……何故じゃ姫様何故あんなに虐げられてなお…!!!あのような薄情者を愛されるのじゃ?)」

するとブータの言ってる事がまるで分かってるかの様に壬生屋は

「わたくし…あの方に嫌われてるんです。でも…どんなに嫌われていてもわたくしはあの方が好き…だから気持ちだけでも伝えようと思って…ふふっ…馬鹿でしょう?」

笑い泣きしながら涙を袖でそっと拭う壬生屋。

「にゃ〜〜〜〜。(姫様おいたわしや…あやつは姫様を憶えておらぬというのに…今姫様が彼奴(あやつ)に愛を伝えた所で、前世に捕らわれておる彼奴は姫様のお心を踏みにじりかねぬ!儂はもう姫様が悲しむ姿は見とうない!)」

そう思ったブータは壬生屋が涙を拭いているその間に壬生屋の手提げに顔をツッコミそれらしきラッピングされた箱を見つけ

『姫様お許しを!!!』そう胸の内で詫びると…徐に箱ごとチョコをかみ砕くブータ。

ベキッ!

すごい音がしてチョコが砕けた。その音にハッとする壬生屋。

何とブータが壬生屋の手提げ袋に顔を突っ込んで何やらゴソゴソしている。手提げの中身を思いだし途端青ざめる壬生屋!

「あああっ!!!!ブータ!!駄目です!!!それは!!!」

どうにか壬生屋がブータを手提げから引き離すと…時すでに遅し。

ブータの口はチョコまみれで半分近くも食べてしまっていた。

「嗚呼っ…なんて事を…」

チョコの材料は先日ようやく裏マーケットで手に入れた品で、

戦時中は嗜好品に関係する物はそう簡単に何度も手に入る物ではなかった上に、作るのも初めてで時間が掛かったので、今日中に作り直すのはとてもではないが不可能に近かった。

…壬生屋は絶望感に打ちひしがれ涙を零した。

 

 

 

 

あれから時間が経ち…

もうお昼になろうとしている。

プレハブの屋上で壬生屋はず〜っと酷く落ち込んでいた。

壬生屋はブータにチョコを食べられたショックで何もやる気が起きないでいたのである。

瀬戸口に渡そうと昨日徹夜して作ったチョコを…ブータに食べられてしまった…。

乙女の決死の覚悟を踏みにじられたのだ…誰だって落ち込むであろう。

壬生屋は授業も出ずに屋上でずっとすすり泣いていて…。

祭や舞やののみが授業に出ないで屋上で泣いている壬生屋を心配して何度も心配して来るのだが、壬生屋は

「ほおっておいて下さいませ」

の一点張りで誰も近づけないでいた。

いくら泣いても涙は枯れる事なく壬生屋の頬を濡らしていく。

「ブータ…よほどお腹が空いていたんでしょうね…(ずずっ)…あの子は悪くない…悪くないのに…

わたくしの不注意が招いた事なのに…(ずずっ)どうしてでしょう?涙が止まりません…」

壬生屋の涙はとめどなく溢れた。

 

 

暫くして背後から誰かが階段を昇ってくる足音が聞こえ壬生屋は身体を固くした。

壬生屋には足音で誰が上がって来たか分かってしまったからだった。

案の定屋上に上がってきたのは5121小隊の愛の伝道師こと瀬戸口隆之で

瀬戸口は屋上で膝を抱えて泣いてる壬生屋の後ろ姿を見て忌忌しげに溜息をついた。

『どうして俺がこんな事…』と内心愚痴る瀬戸口。

 

実は瀬戸口が屋上に上がって来たのには理由があった。

先程教室で…

「みおちゃんずっとかなしんでいるの…かなしいのは、めーなの…」

ののみはシンパシー能力の所為で壬生屋と同調してしまい朝からずっと大きな瞳に涙を溜めている。

「ふむ……壬生屋…一体どうしたと言うのだ?…瀬戸口!よもやお主が原因ではないだろうな…!?」

舞はいつもの如く瀬戸口が原因だと思い込み瀬戸口を問い詰めようとしたが、

「日頃俺と壬生屋が仲が悪いからと言って、憶測で俺を疑うのは止めてくれないか。

あいにく俺は今朝から壬生屋の顔は一度も見ていない。会ってない奴と喧嘩は出来ないだろう?」

瀬戸口が忌忌しげに言い返すと

「うちはてっきりアンタが未央ちゃんに“又”何かしたと思うたで〜」

祭がジト目で瀬戸口を睨む。

「おっ…オイ!壬生屋を泣かしたのは“今回”は俺じゃないぞ!あの人に誓って!」

瀬戸口が必死に身の潔白を証明しょうと必死になっていたら、今まで静かに傍観していた速水がぽややんと瀬戸口に問い掛けた。

「そういえば瀬戸口ってたまに“あの人”って言うよね。それって誰の事なの?」

瀬戸口はふと速水に視線を向けて言葉を詰まらせた。速水の蒼い瞳はかの女神を思い出す。

「ん?それはな、美少年の永遠の秘密だvバンビちゃん」

速水の首に抱きついてぎゅ〜をする瀬戸口。

「瀬戸口〜!だからそれはやめてってば!舞〜助けて〜」

ジタバタと瀬戸口の腕の中で暴れる速水。舞は自分の思考に集中していて速水の声すら聞いていない。

「“あの人”って瀬戸口の事だから、どーせどっかの浮気相手の人妻の事やないの?」

加藤が冷たい視線で瀬戸口を睨む

「なっ!馬鹿を言え!あの人をそんな風に貶めて言うな!あの人は崇高なんだ!俺の女神なんだ!」

「とにかく瀬戸口の大切な人なんだね」

瀬戸口の必死さに、速水は自分でなんとなーく理解した様だった。

そんなクラスメートのやり取りを頭の隅で聞いていた舞は

考え込む様に腕を組み直した。

「フム。……では“今回に限って”は瀬戸口が原因ではない様だな…では一体何が原因で…」

又考え込む舞。

「だから〜俺じゃないって!」

必死に否定する瀬戸口。

「ど〜だか!」

まだ瀬戸口を疑っている加藤。

「加藤…お前さんもしつこいね?」

瀬戸口がうんざりとした顔で加藤を見ると。

「だってアンタ!いっつも未央ちゃん苛めて泣かしてるやんか!」

ビシィ!と加藤に人差指を突き付けられる瀬戸口。事実なので言い返せずに顔を引きつらせる。

「そ…それとこれとはなぁ〜」

「日頃の行いが悪いからだよ瀬戸口v」

満面の笑顔の速水。

「笑顔で言うなよ速水…お前さん……黒だな?」

「アハvv」

「やっぱりアンタが犯人なんやろ〜!」

「違うって言ってるだろうが!しつこいな!」

そんなドタバタなやりとりは、ののみの言った一言で通夜の様に静かになった。

 

「みおちゃんはじぶんをせめているの…」

しーーーーーーーーーーーん…。

 

その言葉を聞いてハッと我に返り、ののみに詰め寄る舞。

「ののみ?壬生屋が泣いている原因が…分かるのか?」

こくりと頷くののみ。

「みおちゃん…ねこさんはわるくないって。ずっとないてるの…」

「猫ぉ〜???ブータ?が原因???なんだぁ〜?それは???」

瀬戸口がすっとんきょうな声をあげる。

「ねこさんがみおちゃんのだいじなものをとっちゃったの…だからかなしいの」

瀬戸口の腰に縋り付く様にののみが訴え

「たかちゃん!みおちゃんをなぐさめにいってあげて!たかちゃんじゃないとめーなの。ののみたちじゃめーなの…」

その、ののみの言った台詞にギョッとする瀬戸口

「ちょっと待て!ののみ!何故俺が行かねばならん?大体俺と壬生屋は犬猿の仲だぞ?仲が悪いんだぞ?見てて分かるだろう?」

「…たかちゃんじゃないと…めーっなの」

今にも泣きそうな顔で涙ぐんでいるののみ。

その様子を見て舞は、ふーっと溜息をつくと

「だ、そうだ。瀬戸口!行って壬生屋を慰めるがよい」

毅然と言い放つ舞に

「慰めるってちょっとHっぽいよねv舞vv」

場違いな感想を言う速水に対して舞は当然呆れた。

「たわけが…何を馬鹿な亊を考えておる!厚志!」

「はぁ〜ぽややんはお気楽でええなぁ〜。じゃ、瀬戸口ぃ〜!未央ちゃんをしっかり慰めてきいや!又泣かしたら承知せぇへんからvvv」

口調はにこやかだが目が笑っていない加藤。

「フム…そうだな…瀬戸口。もしも壬生屋が屋上から降りてこなかったら貴様の命はないものと思うがよい」

真顔で不敵に微笑みながら瀬戸口に脅しを入れる舞。芝村一族は嘘をつかない…舞は本気だ。

「オイオイ…勘弁してくれよ〜」

瀬戸口は理不尽な展開に泣きたくなった。

 

 

ののみに泣きながら頼まれたのと、芝村&加藤に脅されて仕方なく屋上に来たものの瀬戸口は途方にくれた。

一度は無視して仕事に行こうとしたのだが、今度は更にブータに迄頼まれてしまったのである。

「キッド…お主に折り入って頼みがある」

「何だ?おっさん。水臭いな!俺とおっさんの仲じゃないか!」

「キッド…何も聞かずにあの娘を励ましてはくれぬか?」

ブータが指し示すその視線の先には屋上で膝を抱えて泣いている壬生屋の姿が!『また壬生屋か…』げんなりする瀬戸口。

「はぁ?何でおっさん迄もがアイツを気にするんだよ!」

「儂が悪いのだ…」

「ヤレヤレ…何かの悪い冗談だと思っていたら…本当におっさんが犯人か…一体壬生屋に何をしたんだ?」

「良かれと思ってした事であの娘を傷つけてしまった」

しゅんと落ち込むブータ。

「…俺には関係ないだろう」

立ち去ろうとする瀬戸口の背にブータが恨めしそうに嘆く。

「キッド。お主…死に損ないの年寄りの最後の頼みを聞いてはくれないのか?」

其所まで言われて瀬戸口は完全に断れなくなり、壬生屋の元へ行かざるを得なくなってしまった。

「……分かったよ…行けばいいんだろう…」

 

引くに引けなくなって瀬戸口は屋上に来たものの…

大体…壬生屋を見ると胸の奥がざわめき壬生屋の言動に一々苛々して喧嘩をふっかけてしまう自分が…

泣いてる壬生屋に何が出来るというんだ?余計に泣かしかねない。

暫く壬生屋の後ろ姿を見つめていた瀬戸口だったが暫くして

赤味がかった髪をクシャクシャとかき回すと苛々した口調で壬生屋に話しかけた。

「お前さんいつまで此処で泣いている気だ?皆が心配してるだろうが」

聞きなれた…いつまでも聞いていたい…でも今は一番聞きたくない声が聞こえ壬生屋は身を固くする。

「ほおって……おいて…下さい…」

貴方の事が好きなのにどうして自分はこんな態度しか取れないのだろう…と…壬生屋の蒼い瞳から新たに涙が溢れる。意固地な自分が嫌だった。

 

そんな壬生屋を見て、黒髪の女が泣いてる姿がシオネを連想させ嫌な気分になる瀬戸口。

『そんな姿格好で泣くんじゃない…思い出させるな…』

眉間に皺を寄せる瀬戸口。

「何落ち込んでいるんだ?おっさ…じゃないブータに何かされた位で」

ののみの話だと、壬生屋はブータに何かを取られて落ち込んでいるらしい。

猫に物を取られた位で泣いてる壬生屋の気持ちが理解出来なかった。

たいした物でもなかろうし…。と思っていた瀬戸口に

「大事な…物だったんです…」

と、泣きながら途切れ途切れに答える壬生屋。

ふと、そこまで落ち込む壬生屋がブータに何を取られたのか瀬戸口は気になった。

「ブータに一体何を取られたんだ?」

初め押し黙っていた壬生屋も暫くして重い口を開いた。

「……チョコです…」

「たかがチョコじゃないか。又買えばいいだろうが」

瀬戸口が半ば呆れた口調で壬生屋に言う。

「たかがではありませんッ!手作りですッ!昨日徹夜したんです」

「て…手作りねぇ…ほぉ〜…それは…残念だったな…」

そうか…今日はバレンタインデー。

壬生屋が誰かに手作りチョコを渡す気だったという事を知って、壬生屋が誰かに告白しょうとしていた事実を知り、そしてその告白を阻止したブータに何故か感謝したくなり…

思わず緩みかけた口元にハッと我に返る瀬戸口。

『?何故だ?……何故俺は喜んでいるんだ?

壬生屋が誰に告白して…それが成功しても……失敗に終わっても…

俺には関係ない…筈だ…どうしてこんな…気持ちになる!?…』

動揺する複雑な胸の内に自分でも驚く瀬戸口。

「はは…残念だったな。チョコ食べた奴が腹壊して病院送りにならなくて。で、そのラッキーな奴は一体誰だ?」

瀬戸口は壬生屋が誰を好きなのか無性に気になった

しかし壬生屋は瀬戸口のまるで俺は関係ないとでも言いたげ口調に耐えられず

「…貴方です…」

ぽそりと聞こえるか聞こえないかの小さい声で壬生屋は呟いた。

「へ?」

大方若宮か速水の名前が出てくると思っていた瀬戸口は自分の耳を疑った。

『ちょ……ちょっと待て!今…俺宛って言わなかったか???』

激しく動揺する瀬戸口隆之17歳(推定年齢1000歳以上)。(笑)

「壬生屋…い……今…何て言った?俺最近耳悪くてなぁ〜」

すっとぼける瀬戸口に怒り心頭の壬生屋

「ッ………貴方宛のチョコだったって言ったんですッ!」

「な……何だって!?」

寝耳に水の台詞に驚く瀬戸口。

言ってしまった後ハッとなり口元を押えて顔を朱に染める壬生屋

「自爆……です……」

恥じらう壬生屋のその姿に心臓をわし掴まれる様な錯覚に陥り、らしくもなく狼狽える愛の伝道師。

己の動揺を隠すかの様におどけて壬生屋に茶々を入れる

「そっ…それはつまりアレか?いつもの喧嘩の仕返しで…実は毒や下剤入りだったとかだろう?」

振り向いた壬生屋は泣きはらした目で瀬戸口を睨みつけた。

「なっ……!どうしてわたくしがそんな馬鹿げた事するんですか」

言い返した壬生屋の口調にカチンと来た瀬戸口

「じゃあ何で嫌いな俺にチョコなんか渡そうとしたんだ」

と負けじと言い返すと

「好きだからに決まっているでしょう!!!」

壬生屋は怒鳴りつける様に叫んだ。

その告白を聞いて驚愕に紫の瞳を見開く瀬戸口。

売り言葉に買い言葉

告白は乙女の理想とは掛け離れた物になってしまい…壬生屋は泣きたくなったが、グッと堪える。

「好きなんです…どんなに貴方に嫌われようと…貴方をお慕いしているんです…」

俯き加減に呟いた。

「壬生屋…」

 

『オレノコトガスキ???ミブヤガ?オレヲ…スキ…』

壬生屋の言葉が染み渡り全身に広がってゆく幸福感

 

 

ウレシイ………

 

ハッ!!!

どうして俺は…喜んでいる?

どうして…嬉しいんだ!?

まさか…

理由は只一つで明白だった。

俺は…もしかして…壬生屋の事が…好き…なのか?

そう思うと今迄の胸のざわめきもなんとなく理解出来た。

 

 

好きだから気になって目で追ってしまう

好きだから自分を見て欲しくてからかって…

好きだから…

彼女の視線を自分に向かせたくて

手に入れたくて…

誰にも渡したくなくて…

足掻いて…

意地悪して…

いつも傷つけてしまった…

 

どうして今まで気がつかなかったのだろう。

これは…「独占欲」だ。

 

俺は……

馬鹿だ…

子供(ガキ)の様だ

瀬戸口は少し自虐気味にぎこちなく微笑んだ。

まだ…間に合うか?

 

 

「お前さん知っているか?バレンタインは海外では男が女性にプレゼントを渡す日なんだ。だからその〜」

「???おっしゃっている意味が…分かりません」

「だから…受け取って欲しいんだ…その…俺のプレゼント。」

「瀬戸口さん…?」

壬生屋は訝しげに眉をひそめた。

「キス…をプレゼント…したいんだが…駄目か?」

「ふっ…不潔…ですっ!!!…」

瀬戸口の提案に驚き真っ赤になる壬生屋

 

と、突然二人の周りを春一番の強風が吹いた

壬生屋が風で乱れる髪を押えようと必死になっていたら瀬戸口の指が壬生屋の頬に触れ

そして……

風が吹きやむ頃には顔を赤くした壬生屋が呆然と立ちすくんでいた。

「ずるい…卑怯です…心の準備が…」

「じゃあ…もう一度…キスしてもいいか?」

瀬戸口が優しく微笑む。

「え…」

壬生屋は今迄見た事もない瀬戸口の微笑みに真っ赤な顔を更に赤くして、小さく“こくり”と頷いた。

一瞬だけ交差する紫と碧の視線。

 

瀬戸口の腕が壬生屋の腰をそっと自然に抱き寄せ壬生屋を見つめて…そして優しく壬生屋の唇に接吻る。

「んっ…」

壬生屋の唇から漏れる甘い吐息

瀬戸口はその吐息迄も味わい貪るように壬生屋に接吻ていった…

 

 

気がつけば此れ程迄に俺の魂を捉えて離さない存在…

壬生屋未央…

生涯愛する事を誓ったシオネの存在を希薄にさせてしまう程に…

狂おしい程にお前さんが愛おしい…

俺を捕まえた事を一生後悔させてやる…

 

お前さんが嫌がっても…もう離さない…

もう…お前さんの髪の毛1本ですら…

俺だけのものだ…

瀬戸口は壬生屋を抱きしめる腕を更に強くした。

 

春一番の風が二人の周りを柔らかに包み込む…

 

春はもう、すぐ側迄来ていた。

 

end.

作品紹介・・・つか言い訳チック

ヘボ作10作目は(9作目は壬生屋祭投稿作品につき祭終了時に自宅にもアプ致します)もうすぐ4月…(汗)今更バレンタインネタアプすんのは気が引けますが(苦笑)実はこれ書いていた最中2/14に春一番が熊本で吹きまして(笑)それで最後を思いついたという(汗)行き当たりばったりなSSだったりします。(笑)最後が思いつかなかったのでお蔵入りしそうになりましたがね(笑)イエ…私の作品だんだんワンパターン化の一途を辿っておりますからねぇ…てゆうか!最近強く感じるのですが、私は瀬戸口に愛されまくっている壬生屋…そのラブい二人が大好きな様ですvvv多分私が瀬戸口スキー

で女だからでしょうね。(笑)今回のお話は瀬戸口がコロリと壬生屋に堕ちる迄。ラブラブ好きなんです!切ない系も鬼畜も(笑)好きですが…てゆうか瀬戸壬生萌激しすぎて日常生活駄目人間まっしぐら〜ですよ奥さん!誰か私を止めてクレ…(吐血)イヤ、瀬戸壬生萌は死んでも止めたくはないけどね(笑)ヘボ作ですが感想とか頂けるとメチャ嬉しいですのでどぞツッ込んでやって下さいませ。(笑)

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