恋酔

〜君を探してた〜

BY.櫻

 

 

はらり・・・はらり・・・と、桜のピンクの花弁が舞い降りる。

柔らかな陽射しが差す満開の桜の下で・・・

壬生屋は何故か犬猿の仲の瀬戸口隆之に理由もなく背後から抱きしめられていた。

どうしてこんな事態になったのだろうか?壬生屋は纏まらない思考回路で考える・・・

 

 

今日は5121小隊の皆で熊本城に花見をしに来ていて。

染井吉野が満開の熊本城は桜の花弁のピンク色に彩られとても風雅で。

甘酒が振る舞われ、ほろ酔い加減で壬生屋は小隊の皆と桜の花を愛でていたのだったが、

若宮が壬生屋に酒を薦めだした途端いきなり瀬戸口が壬生屋の目の前に現れ、

強引に壬生屋の手を引いて人気のないこの桜の大木の下に連れて来たのだ。

有無を言わせずにその場に座らせられ後ろから瀬戸口に抱きしめられてしまった壬生屋は呆然としていた。

普段の壬生屋なら腰にある鬼しばきで瀬戸口を張り倒している所だが、

酒が入っている所為も有り咄嗟の対応が壬生屋は取れずにいた。

それに・・・壬生屋は、何よりもこの状況に嫌がっていない己の心に驚いていたのだ。

瀬戸口とはいつも顔を合せると喧嘩してばかりなのに・・・。

 

春先とはいえ木陰に入ると風は少し冷たく背中に感じる人肌の温もりは心地よかった。

でもどうして自分は抱きしめられているのに怒りが湧いて来ないのだろうか?

理不尽な行為を強要されているのに・・・何故?

背中に瀬戸口の意外に厚い胸板を感じ、

密着する瀬戸口のがっしりした体躯が否応なしに異性を感じさせ、壬生屋の胸の鼓動が早鐘をうつ。

鼓動が・・瀬戸口に聞こえてしまいそうな気がした・・・

暫くしてから、壬生屋は震える声音で瀬戸口に問い掛けた。

 

「瀬戸口君?・・・あ・・あの・・・酔っていらっしゃってるのですか?」

 

壬生屋の問い掛けに初め無言だったが、暫くして重い口を開く瀬戸口。

「ああ・・そう・・かもな・・・俺は酔っている・・のかもしれん・・・」

 

ああ。やはりと壬生屋は思った。

酔ってでもいない限り彼が自分にこんな事をする筈がないのだ。

だってわたくしは“彼に嫌われているから・・・”

その事に考えが行くと壬生屋の胸は酷く重くなる。

胸が苦しくなる原因も最近になってようやく分かり始めた

 

自分は・・・彼に惹かれているのだ。だから彼に嫌われる事が悲しいのだと。

 

壬生屋はいたたまれない気持ちになりその場を・・・

というか瀬戸口の腕の中から逃れようと考え身じろいだ

「そう・・・ですよね・・・・・では・・その・・・離して下さいませんか・・」

そう瀬戸口に告げたが、

「その提案は却下だな」

即答する瀬戸口。

途端に壬生屋は、瀬戸口の理不尽な返事に怒りでカーッとなった

「なっ!・・・どうして?」

壬生屋の言葉を遮る様に瀬戸口は言葉を続けた。

「俺・・・人肌恋しいの。」

「っ〜〜〜何を!・・・何をおっしゃっているのです?抱きしめるのならば他の方にして下さいませ」

眉間に皺を寄せて壬生屋は叫んだが、

「他の奴じゃ・・・駄目なんだ・・・」

瀬戸口の酷く心細い声に壬生屋は怒りを静まらせていく。

 

二人の周りを春風が通り過ぎて行った・・・

 

「瀬戸口・・・君?」

訝しげに瀬戸口の次のリアクションを待つ壬生屋。

瀬戸口の抱擁はあくまで柔らかく簡単に抜けられそうなのに、何故か腕を退かそうとしてもビクともしない。

壬生屋は溜息をつくと、逃げるのを諦め瀬戸口の腕から手を離し瀬戸口にされるがままにした。

 

抵抗をやめた壬生屋を見て瀬戸口は微笑むと、独り言のようにぼそっと囁く。

「・・壬生屋・・・お前さんが小隊内の女性陣で一番肉づきが良くて抱き心地いいんだよ♪」

瀬戸口のその抱擁理由に眉根を吊り上げる壬生屋。

「なっ!!!!!それって私が太っているっていう意味ですか?失礼です!

だったら、私なんかより肉づきが良い中村さんに抱きつけば良いでしょう?」

途端に激高する壬生屋。

抱き心地云々は瀬戸口は褒め言葉で言ったのに壬生屋からしてみれば、

抱き心地が良い=太っている。と勘違いした模様。

瀬戸口は苦笑いを堪えながら壬生屋の後ろ姿を見つめた。耳迄真っ赤になっている。

可愛い奴め・・・内心瀬戸口はそう思った。

「ヲイヲイ・・・壬生屋。お前さんそれは暗に中村が太ってるって言ってる様なもんだぞ。

てゆうか男の俺が同性の中村に抱きついたら変態だろうが?」

「わたくしに抱きついても変ですッ!わたくし達は・・・恋人でも・・友人の間柄でもないのですから・・・」

しゅんと落込む壬生屋を見て瀬戸口は微笑むと、眼下にある壬生屋の白い首筋に顔を埋めた

甘やかな匂いが瀬戸口の鼻孔をくすぐる。

首筋に瀬戸口の熱を感じ慌てふためく壬生屋。

「きゃあ!な・・・何を・・・」

「今日は温かいな・・・」

「?・・・そう・・ですね。」

「俺さ・・・今日誕生日なの。」

「はぁ。・・・???」

「だからさ。祝ってくれないか?」

「祝う?」

「・・・欲しい物があるんだ・・・」

「それがわたくしに何か関係でも?」

「ああ。それはお前さんにしか出来ない事だ」

「わたくししか出来ない事?」

 

 

「お前さんを・・・俺にくれない?」

「え・・・?」

「俺は・・・お前さんが欲しいんだ・・・」

「な・・・何を馬鹿な亊を言って・・んっ・・」

突然瀬戸口が振り向いた壬生屋の細い手首を捕まえて徐に唇に口付けた

壬生屋の逃げ腰の舌を追いかけ搦め捕り暫くその甘い口内を瀬戸口は味わう。

 

 

そして息が上がった壬生屋を解放すると瀬戸口は柔らかな眼差しで壬生屋を見つめた

「壬生屋・・・」

壬生屋は瀬戸口からの濃厚なディープキスで腰が抜けてしまった様で顔を赤くして潤んだ瞳で瀬戸口を見上げた

「あ・・・ど・・どうして・・・」

瀬戸口は壬生屋を愛おしそうに見つめると

「俺・・・お前さんに酔ったみたい」

と言って壬生屋の背に腕を回して抱き寄せる

「え?」

瀬戸口は壬生屋をぎゅーして満開の桜の木の下で微笑んだ

「見つけたんだ探し物」

「探し物?」

「そう・・・お前さんを探してた」

「え・・・?」

「俺はお前さんをずっと・・・気が長くなる程遥か昔から・・・探し求めていたんだ・・・」

 

「瀬戸口君・・・?」

「だから・・・俺にお前さんをくれないか・・・ずっと待った御褒美に・・・」

瀬戸口の泣きそうな顔をじっと見つめた壬生屋は

「よく・・・分かりませんが・・・貴方がわたくしを嫌ってなくて・・・

そして・・・貴方が本当に心から・・わたくしを望むのであれば・・・差し上げてもいいです・・・」

「壬生屋・・・」

瀬戸口は震える指先で壬生屋の頬に触れた。

「はい。」

「俺だけを見て・・・」

「・・・はい」

「俺だけに触れて・・・」

「・・・はい」

「俺だけの物になってくれるか?・・・」

「はい」

含羞んだ壬生屋の微笑みが瀬戸口の胸を熱くさせる。

ずっと・・・探していたんだ・・・この笑顔を・・・

二度と手に入れる亊は出来ないと思っていた・・・

でも・・・

もう・・・俺だけのものだ・・・

「有り難う・・・」

瀬戸口はそう言うと破顔して壬生屋を強く強く抱きしめ唇にそっと口付た。

 

二人の周りを桜の花弁が風で舞踊り・・・

 

end.

作品紹介・・・つか言い訳チック

ヘボ作11作目は・・・短いんですが(笑)瀬戸口隆之君誕生日御目出度う〜!なヘボSSS(吐血)長くしょうと肉付けしていたら瀬戸口の誕生日からどんどん離れて行きそうだったので(汗)とっととアプ(笑)だってバレンタインネタなんかアプしたの4月チックだったし(滝汗)これマトモに校正してたら間違いなく5月になりそうなので(笑)で。このヘボSS実は瀬戸口祭に投稿した絵と微妙にリンクしております(笑)キーワードは「桜の木の下で」。あっちは夜ですがこっちは昼(笑)やってるこたぁイチャラブで大して変わりませんが(笑)投稿した絵の方はエロ臭いですがね(汗)oversな瀬戸口君が壬生屋を愛していた亊を思いだしてラブラブ状態になったとでも思って下さい(笑)ただイチャイチャしたのが書きたかっただけ(笑)それだったら普通のラブラブ書けば良かった!(汗)今頃気づいても・・・・・その後うちの裏物SSともリンクする予定です?(大笑)結局はそっち方面にツッ走ってまうのねアタシ・・・だってそれが一番萌えなんだも〜〜〜ん(笑)エロ瀬戸ラブ(殴殺)ヘボ作ですが感想とか頂けるとメチャ嬉しいですのでどぞツッ込んでやって下さいませ。(笑)

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