幸せの轍
by.櫻
放課後仕事をしようとハンガーに向かっていた壬生屋は、 ハンガー側で壬生屋は突然草履の鼻緒が切れ転倒しかけた・・・ 「きゃっ・・・!!!」 グラリと蹌踉めいて、咄嗟の出来事で反応しきれずに悲鳴をあげる。 衝撃に身構えた壬生屋だったが・・・が・・・?いくら待っても転倒の衝撃はない。 恐る恐る瞳を開いた壬生屋の耳に背後から突然甘い美声が聞こえた。 「相変わらず危なっかしいなぁ〜・・・お前さんは」 声を聞いただけで相手が分かってしまい慌てふためく壬生屋。 何故かと言うとその声はいつもよく耳にしている我が5121小隊の、壬生屋とは犬猿の仲のオペレーターの男の声だったからである。
「・・・・え?・・・ええっ???せ・・瀬戸口君ッ!?」 どうやら転びそうだった所を後ろから瀬戸口に抱き止められ難を逃れた様であった。 しかし…何時まで待っても己を解放しない瀬戸口の態度に眉根を寄せ不信感を覚える壬生屋。 「???・・・・」 壬生屋がハッ!と我に返ると 瀬戸口の抱き止めた腕が偶然にも壬生屋のふくよかな胸の部分に当たっており、その亊に気がついた壬生屋は激しく動揺した。 「なななっ・・・・・何をなさるんですかっ!」 動揺して思いがけず上擦った声になってしまう。 「普通、助けてやったのにそんなつれない事言うかね?俺が助けなかったらお前さん転んでたんだぞ?」 呆れ口調の瀬戸口。 確かに助けて貰っておいてその態度はないであろう…と、壬生屋は素直に態度を改め瀬戸口に謝った。 「あ・・・その・・す・・・すみません・・・ありが・・とうございます・・・もう大丈夫ですから・・・離して下さいませ」 瀬戸口の腕の中からそっと解放され安堵する壬生屋に、今度は壬生屋の目の前に手を差し伸べる瀬戸口。 「ホラ、鼻緒切れて歩けないだろう?おぶってやるから」 壬生屋に背中を向け中腰になる瀬戸口。どう考えても普段の彼からは想像つかない! 途端に顔を朱に染める壬生屋。からかわれていると思った様である。 「なっ!!!結構です」 瀬戸口は足元を眺め昨日の降った雨で地面が泥濘んでいるのを見てから壬生屋に視線を戻し 「足袋汚れるぞ?」 ぼそっとつぶやく。 「っ〜〜〜〜〜。でも・・・嫌、です・・・わたくし・・その・・重いです・・・から」 大和撫子の壬生屋である。異性にそんな事されたら卒倒してしまいそうだ。 恥ずかしがっている壬生屋を見つめ瀬戸口は微笑み 「ヤレヤレ…仕方ないな・・・」 と、呟くと瀬戸口はぐいっ!と壬生屋の膝下に手を差し入れ徐に抱え上げた 「え???」 急に高くなった視界に驚き戸惑う壬生屋だったが 瀬戸口にお姫さまだっこされている現状を把握して慌てた 「きゃあああああ!!!!!おっ・・・降ろして下さいっ!」 瀬戸口の腕の中でジタバタ暴れる壬生屋 「その提案は聞けないな♪」 「な・・・不潔ですっ!」 ムッとした顔の瀬戸口が壬生屋に鋭い視線を向ける。 「あぁん?おんぶも抱っこも嫌なのか?なんなら肩に担いでそのままお持ち帰りしてもいいんだぞ?」 「は?????お・・・お持ち帰り??」 瀬戸口の意図する意味が分からず小首を傾げる壬生屋。 「こんな場所じゃ不潔な事も出来ないしな♪」 ニヤリ…と不敵に笑う瀬戸口。どさくさに紛れて壬生屋の耳に息を吹きかける。 瀬戸口の台詞と行為で瞬時に更に赤くなる壬生屋 「ふっ・・・不潔ですっ不潔ですっ不潔ですっ不潔で〜〜〜〜〜〜〜〜〜すっ!!!!」 予想通りの壬生屋の反応に喜んでいる瀬戸口。 「そうか〜壬生屋は俺とそんなに不潔な事したいんだな♪」 クックックッ…と瀬戸口は笑いを押し殺している 「違いますッ!」 怒った顔をして瀬戸口を見上げる壬生屋。 その壬生屋の顔をキョトンとした顔で見つめ 「ん?遠慮しなくてもいいんだぞ?」 「遠慮なんてしていませんッ!」 更に激高する壬生屋。
「俺はお前さんとそういう関係になりたいんだけど・・・嫌か?」 急に真剣味を帯びた瀬戸口の視線と声音に壬生屋はぱちくりと瞳を見開いた 「え・・・・・?と・・・突然な・・何を・・・???」 壬生屋が気を動転させて戸惑っていると 瀬戸口の顔が壬生屋の顔に近づいて来て・・・ その瀬戸口の迫る秀麗な顔に呆気にとられ、息を呑む壬生屋 瀬戸口は壬生屋に顔を寄せて微笑むと壬生屋に接吻た。それも・・・唇に ちゅ・・・・・・・・・音を立てて離れる瀬戸口の形の良い薄い唇。 壬生屋は信じられないと言った感じで瀬戸口の顔を凝視して硬直している。 暫くして己の身に起こった出来事をようやく悟った壬生屋は 「○×△□※〜〜〜〜〜!!!」 顔を真っ赤にして声にならない悲鳴を上げ、眉根を吊り上げて驚きで口を金魚の様にパクパクさせた。
「俺の気持ち分かってくれた?」 「○×△□※〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」 パクパクパクパクパク 瀬戸口に突然キスされて動揺しまくりの壬生屋。衝撃が強すぎて言葉が出てこない。 其れもその筈昨日迄瀬戸口と壬生屋は仲が悪かったのだ。 だから瀬戸口にいきなりキスなんかされても何が何やら分からない 「まだ・・・分からない?」 瀬戸口は優しく壬生屋を見つめると・・・ 「・・・?」 ちゅ・・ 瀬戸口の唇が又重なった。 「!!!」 驚きの連続で固まったままの壬生屋だったが 今度は一度ではなく、何度も何度も啄ばむように壬生屋に接吻る瀬戸口。 抵抗しょうとしても抱えられた状態では思うように抵抗出来ない。 「ん・・・んぁ・・・いやぁ・・・」 壬生屋の口からは艶めいた吐息が洩れ ちゅ・・ 瀬戸口のキスの雨が壬生屋に降り注ぎ、抱きかかえられた状態で逃げ場のない壬生屋は瀬戸口の降り注ぐキスの雨に翻弄されていった・・・ 瀬戸口の舌が壬生屋の口内に滑り込み歯列をなぞり、壬生屋の舌を搦め捕る。 壬生屋はキス自体が初めてなのに瀬戸口から与えられる濃厚なディープキスにあまりのショックに茄子がままになってしまい・・・
「ん・・ぅ・・」 そして長い長〜いキスが終わる頃には壬生屋は瀬戸口に抱き抱えられたまま真っ赤になって腰が抜けてしまっていた。 瀬戸口の頬も幾分か赤い。 「俺がお前さんの事好きなの・・・分かってくれた?」 ・・・・・・・・・・・・こくり。 なんとか頷き返す壬生屋 「なぁ・・・このままお前さんを俺の家迄お持ち帰りしてもいいか?」 ぴくぅうっ!!!!壬生屋の身体が震える。 暫く押し黙っていた壬生屋だったが小さく呟く 「・・・・っ・・ふ・・・・不潔・・・ですっ・・・」 全身茹で蛸の消え入りそうな壬生屋の声に瀬戸口は微笑みながら 「こんなエッチな俺は嫌かい?」 と壬生屋の耳元で甘く囁く 蒼い瞳を大きく見開いて更に顔を赤くして首を左右に振る壬生屋 嫌な筈はない・・・ だってずっと好きな相手だったから。 でも・・・嫌われてたから。 だから毎日嫌がられても彼の素行を正す為に鬼しばきを振り回して追い掛け回していたので。 その意中の相手からキスされて嬉しくない筈もなく・・・ 壬生屋は瀬戸口の腕の中で、ただ顔を真っ赤にして固まっていた。 「そうか♪じゃあ・・・連れて帰ってもいいんだな?」 顔を赤くして、うりゅ・・・と涙ぐむ壬生屋 瀬戸口の事は好きなのだが急な告白と展開に心と身体がついていってない模様 壬生屋の涙に弱い瀬戸口は 「じ・・・じゃあ又今度・・・お前さんの気持ちが受け入れ体制になってから・・・な。」 こくりと小さく頷く壬生屋 その仕草がメロメロになる位可愛くて瀬戸口は辛抱たまらず 「ああっ!!も〜可愛いなぁ〜!お前さんはっ!!!たまらんなぁ〜」 そう言って壬生屋に頬擦りする瀬戸口 壬生屋は全身を真っ赤にして更にガッチガチに固まった
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ハンガーで仕事の手を止めてそののどかな光景を眺めている速水 「あーあ・・・瀬戸口・・・あんな所で何やってんだか・・・」 速水のぼやきに滝川が計器から顔を上げる。 「あん?師匠がどーしたって?」 外を眺めている速水に視線を向けた滝川の目に、壬生屋をお姫さまだっこしてキスしている瀬戸口の姿が視界に入り驚く滝川! 「・・・って、うわっ!師匠!壬生屋に何してんだ!?」 ガターン!! 「痛っ・・・・・てェええええ!!!」 驚いて工具を足元に落とし自分の足に直撃させ情けない声を上げる。 「っ・・痛テテ・・なっ・・・何やってんだよ師匠は!」 「大丈夫?滝川。あ〜〜〜アレね。・・・あれは、どう〜見てもキスだね・・・・仲の宜しい亊で」 「壬生屋固まってないか?」 「そうみたいだね」 初々しい壬生屋を見て目を細めて微笑む速水。 「昨日迄二人共仲悪かっただろう?一体どうしたんだ???」 5121小隊で唯一仲が悪い二人・・・と言うより瀬戸口が壬生屋を一方的に嫌っていたのだが・・・ どういう心変わりか、今現在はどーみても瀬戸口は壬生屋にメロメロの様だ(笑)。
「んー多分昨日の戦闘が原因じゃないの?壬生屋さんの士魂号大破しちゃったじゃない?」 「そうそう!計器の故障で壬生屋の機体の信号が消えた時の師匠のあの取り乱し方凄かったよな!」 『壬生屋ーーーーーー!!!!死ぬなーーーーーー!!!』 指で目をタレメの様にして昨日の瀬戸口の真似をする滝川。 「って絶叫だよ。聞いててこっちの方が恥ずかしくなったもんな!」 そうそう!と滝川に相槌をうつ速水。 「でも・・・士魂号は大破しちゃったけど・・・壬生屋さんに怪我がなくて幸いだったよね」 「本当。本当。俺達パイロットは替えが効かないからな。」 そう言ってもう一度瀬戸口と壬生屋の方を見たら、今度は壬生屋に頬擦りしてる瀬戸口が目に入る。 あまりのラブっぷりに滝川は本気で呆れた。 「しっかし・・・あの変わりっぷりは一体何なんだよ師匠・・・今迄散々壬生屋を苛めてたくせに」 「さぁ・・・瀬戸口も色々と何か・・・思う所があったんだろうね」 「だってよ、好きならどうして今迄壬生屋を苛めてたんだ?師匠は・・・」 「瀬戸口は本当に好きな子ほど苛めるタイプみたいだしね」 苦笑いする速水。 「あ・・・・そっか・・・なーるほど!だから壬生屋を苛めてたんだな!・・・ってガキじゃあるまいし」 「ある意味子供だよ。瀬戸口は。ってゆうか壬生屋さんに関しては・・・だけど。」
いつも戦闘の事で瀬戸口に怒られ蒼い瞳に涙を溜めて泣きまいとする壬生屋。 気丈な彼女の姿を同じパイロットの立場で身近見てきた速水と滝川は感慨深げに二人を見た。 「壬生屋さんは周りが見てて痛々しい程瀬戸口に嫌われていたから・・・良かったね・・・」 速水に相槌を打つ様に頷く滝川。 「本当だよ。師匠万人に優しいとかいいつつ壬生屋にだけは冷酷無比だったからなぁ・・・」 「でも・・・ま、良かったんじゃねェの?壬生屋もさ、惚れてたんだろ?師匠に」 「多分間違いなくね。」 「じゃなきゃ〜あんなに嫌われても師匠だけを追っかけ回したりしないだろう?な!」 「周りから見れば、分かりやすいんだけどね。」 「そう言う速水だって分かりやすいぞ。芝村にゾッコンじゃないか。」 意地悪そうに笑う滝川。 「そう言う滝川だって森さんと付きあっているんでしょ?」 「ゲッ!どうしてそれを・・・いやぁ・・・俺はその・・・」 頬を赤く染め誤魔化そうとする滝川の肩をポンと叩き 「見てたら分かるよ。滝川。」 「まいったな・・・他の皆には内緒だからな?」 「了解♪皆で幸せになれるといいよね・・・」 「そうだな・・・平和が一番だよな!」 「其の為にも僕達が頑張らないとね!」 「おう!頑張ろうぜ!」
仕事に戻ろうとした速水はハンガーに向かって走ってくる舞を見て微笑んだ。 ん?・・・そう言えば舞と壬生屋さんって・・・仲良かったよねぇ・・・?と思った途端!舞の怒鳴り声が耳に飛び込んで来た
「せっ・・瀬戸口!貴様!我が友に何をしておるのだっつ!!!!」 「ゲッ!姫さん!ちっ・・・違うんだ!これはその〜〜俺達はラブラブなんだよな?なっ?壬生屋!」 壬生屋に慌てて同意を求めるが・・・ 「ま・・・舞・・・さん・・・わ・・わたくし・・・」 親友の舞の顔を見て緊張の糸が切れたのか泣きだす壬生屋。それを見て更に勘違いする舞。 「このたわけ者ぉ〜〜〜〜〜!!!!!未央を辱めたな!!!!!瀬戸口!!其所に直れ!引導を渡してやる!」 「だぁああああああ!!!!!違うって!話を聞いてくれ」 「問答無用!カトラスが良いか、未央の鬼しばきがいいか・・・考える時間を10秒与えてやる・・・」 「うわ〜〜〜〜〜違うって!!!」 「い〜〜〜〜〜〜〜ち・・・・に〜〜〜〜〜〜〜〜〜い」
予想通りの展開に苦笑いしながら修羅場を遠目で眺めている二人。 「オイオイ速水。早く行ってやれよ。芝村の剣幕に師匠青タレてんぞ?」 「やれやれ・・・僕の出番だね」 立ち上がり舞の元へ向かう速水。
速水は微笑みながらこの世界で一番愛しい者の名を呼んだ
「舞」
空は青く こんなにも穏やかで 平和にしてみせるよ。必ず。 だって世界はこんなにも幸せに満ちているのだから。
end. |
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作品紹介・・・つか言い訳チック ヘボ作16作目は・・・夏コミのペーパーに載せていたSSにちょいと手を入れたSSです。実はかなり前に書いてたSSなのですが(笑)榊先生のGPMの小説で瀬戸口と壬生屋が初Kiss!ちゅー記念にペーパーに載せたのです。今回は色々手を加えたので最後が速舞チックですが(笑)やはり私は基本ラブ米が好きなので(笑)今回は微妙ですけどね。や〜でも公式の小説で瀬戸壬生拝めるとはvvv今年は良い年でしたvvv後はリタガンが心配ですね〜まぁ例のα本を読む限りでは…(笑)ではでは楽しんで頂けたなら幸いですvvv |
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