溺れる魚

 

by.櫻

 

 

「あの・・・・瀬戸口さん。」

校舎裏で壬生屋に呼び止められ瀬戸口は背後を振り返った

「ん?壬生屋?俺に何か用か?」

壬生屋は俯いて何か言いたげに立っている。

「あのっ・・・その・・・何でも・・・ないです」

「???変な奴だな・・・」

瀬戸口は訝しげに壬生屋を見て首を傾げながら指揮車に行こうとしたら・・・

服が何かに引っぱられ体が動かない。

「ん?」

不思議に思いその引っ張られている部分を見て見ると・・・

なんと壬生屋が瀬戸口の制服の裾を掴んでいた。

壬生屋は、ぼーっと俯いてつっ立っている。

 

 

「・・・おい。壬生屋」

瀬戸口は半分呆れながら壬生屋に声をかけた

「はいっ!!!ななな何ですか?」

声をかけられ慌てて生返事を返す壬生屋。動揺しているのか声も裏返っている。

「裾。」

瀬戸口が視線で『離してくれ』と訴えかけても

「はい???」

壬生屋はさっぱり瀬戸口の意図する意味が分かっていない様だ。

無意識なのか?

仕方なく瀬戸口はヤレヤレといった感じで壬生屋が掴んでいる裾を指さし

「服の裾掴んでる。離してくれないか?動けないだろう?」

と言うと、

「あっ!!!。」

ようやく壬生屋も気がついたのか短い悲鳴を漏らした。

「司令に呼ばれて指揮車に行かなくてはならないんだよ」

「あっ。す・・スイマセン失礼しました」

そっ・・・と、名残惜しそうに壬生屋の細い白い指が瀬戸口の制服の裾から離れる

瀬戸口は目線で壬生屋の手の動きを追った・・・

 

壬生屋が俺に何か言いたげなのは明白なのだが、

何も言えず今にも泣き出しそうな顔をして案山子の様につっ立っている壬生屋を見て

「はーーーーーっ・・・」

瀬戸口は盛大に溜息をつくと

「お前さん。俺に何か言いたい事があるんじゃないのか?」

と、壬生屋に問う

「えええっ!そっ・・そんなっ・・・ええとその・・・自爆です。」

顔を赤らめて意味不明な言葉を返す壬生屋

「はぁ?何だそりゃ?何が言いたいんだお前さんは」

瀬戸口が戸惑っていると

「そ・・・そんな恥ずかしい事言えませんッ!!」

顔を赤らめて壬生屋が叫ぶ。

特攻癖のある彼女は相変わらず自分の頭の中で自爆している様だ。

恥じらいからか壬生屋の白磁の肌がサーッと朱に染まる。

おーおー♪。耳朶迄真っ赤になって・・・可愛い奴め。

瀬戸口は苦笑いを顔に浮かべた。

 

壬生屋は本当に恋に不器用だ。

初心というか何というか・・・

恋愛に関しては百戦錬磨の愛の伝道師のこの俺でも壬生屋の扱いには気を使う。

今迄さんざん泣かして来たから・・・

もう二度と傷つけたりしたくなかった。

 

それというのも・・・

つい最近迄、俺と壬生屋は犬猿の仲だったのだ

今は喧嘩友達迄その関係は修復したものの壬生屋の扱いには非常に困っている。

何故困っているかというと、今迄煩わしいと思っていた彼女の一連の言動や行動も、

その感情に好意が介入すれば見方も変わってくる訳で。

壬生屋を見るとついからかったり、抱きしめたくなる衝動に駆られる感情に自分でも少し戸惑っている。

その上、壬生屋の前では己の感情が抑えが利かないのだ。

想いが溢れてしまう。

今迄あんなに嫌っていたのに・・・現金だよな・・・俺も。

大体・・・好きな子だから苛めて自分だけに振り向かせたいって・・・

己のガキで滑稽な今迄の愚行を呪いたくなる。

 

しかし

俺を過剰なスキンシップ行為に走らせているのは

彼女が俺の事を好きなんだろうな。という確信と

俺も彼女に惹かれ・・・そして彼女を求めている。という事実

 

彼女に惹かれている俺から告白するのは簡単だが、出来れば彼女の口から愛の告白を聞きたい・・・

清廉無垢で初心な彼女に俺を好きだと言わせたい。

・・・と思うのは狡い考えだろうか・・・

 

ふと気がつくと

俺が思いに耽っている間も目の前で、もじもじとしている壬生屋に

瀬戸口はからかい口調で

「もしかして・・・提案?・・・イヤ、告白かい?」

冗談めいて壬生屋に尋ねると

壬生屋は肩をピクリとさせ更に固まった。

『ビンゴか・・・』

からかいがいのある奴だよまったく。瀬戸口は内心そう思った。

このまま彼女の告白を聞きたいという気持ちと、

今の関係をもう少し楽しみたいと思う気持ちが頭の中で交差する・・・

 

「俺はお前さんのそうゆう所嫌いじゃないよ」

と言って笑いながら瀬戸口は壬生屋の手を引いて己の胸に引き寄せる

すると壬生屋から“ふわり”と金木犀の薫りがした。

髪の毛に小さい金木犀の花が一つついている。校舎裏に咲いている金木犀を思い出し

嗚呼・・匂いの元はこれか・・・。瀬戸口は微笑む

 

壬生屋は瀬戸口に不意に抱き寄せられて驚き狼狽えた

「なっ・・ななななな!!!」

パイロットのくせに意外に華奢で細い壬生屋の身体をやんわりと包み込む様に優しく抱きしめ

 

「なぁ壬生屋。俺の好みを教えてやろうか?」

壬生屋の耳元で甘く囁く様に言葉を続ける

「な・・なんですか?」

瀬戸口に抱き寄せられている状況を一瞬忘れ壬生屋は瀬戸口の言葉に耳を傾けた

「俺はなぁ・・・・長い黒髪の女性が好みなんだ」

瀬戸口の指が艶やかで絹糸の様な壬生屋の髪を撫でる

「えっ…!?」

壬生屋の肩が微かに震える

「それから腰は・・・そうお前さんみたいにキュッと引き締まった腰がいいなぁ〜安産型の尻も良い。」

壬生屋の腰を抱き寄せ、壬生屋のお尻をさらりと撫でる

「ふっ・・・」

壬生屋の頬に更に朱が増し途端に柳眉が跳ね上がる

「胸もお前さん位あった方が断然いいな。うん。抱き心地が良いしな。」

二人の体が密着するぐらいに更に抱き寄せて

「ふ・ふっ・・・」

壬生屋は羞恥の為か怒り顔で金魚みたいに口をパクパクしながら瀬戸口を見上げ固まっている

「そして唇は・・・そうお前さんみたいな・・・桜色の艶やかな唇がいい・・・思わずキスしたくなる様な・・・」

そう言って瀬戸口は壬生屋を見つめ、吸い寄せられる様に壬生屋の唇にそっと口付けた

驚愕に見開かれる壬生屋の蒼い瞳。

 

チュッ・・・

 

音を立てて離れる瀬戸口の唇

壬生屋を愛おしそうに見つめる

 

 

暫く鳩が豆鉄砲くらった様に唖然としている壬生屋。

一瞬自分の身に何が起こったのか理解出来ていないようだ。

と。

ようやく事態を把握したのか顔から火が出そうな程真っ赤になって

瀬戸口の頬を渾身の力を込めてパァン!と、ひっぱたき

「不潔ですっーーーーーー!!!!!!!」

と叫んで壬生屋は怒ってパタパタと走り去ってしまった。

 

 

 

瀬戸口は壬生屋の走る後ろ姿を見つめながら痛む頬を抑え・・・

眩しそうに天を仰いだ

空の青さが目に痛い

 

しまった・・・

今のはまるで愛の告白となんら大差ないじゃないか・・

色恋沙汰は惚れた方が負けとは・・・よく言ったものだ・・・

瀬戸口は頬を朱に染め柄にもなく照れて頭を掻いた。

 

 

 

フラグは立てた。後は魚が網にかかるのを待つだけ。

 

と、言っても俺の方が既に壬生屋に嵌まってるけどな。

恋におぼれた・・・魚といった所かな?

その昔、悪鬼と恐れられた祇園童子ともあろうこの俺が・・・

16歳の小娘一人に振り回されている。

俺もヤキが回ったか・・・

瀬戸口は

ククク・・・

と笑いを漏らし、ひとり思い耽る。

 

 

俺が1000年以上も長い間ずっと探し求めて来た・・・

万物の魔法の女王 シオネ・アラダ・・・

そしてシオネの今生の転生体の・・・彼女。

同一の存在なれど全くの別人。

そのシオネ以上に愛しいと思う程に俺の魂を掴んで離さない存在

壬生屋・・未央・・・。

 

・・・俺は

彼女がいないと

水のない魚の様で息も出来ない

 

彼女がいるから・・・

俺は今生を生きてゆける

 

 

二人の出会いは必然・・・

勿論惹かれ愛し合うのも・・・運命だ。

そう・・・

俺は確信していた。

 

 

嗚呼・・・早く俺に愛を与えてくれよ

愛に飢えて飢えて溺れ死にそうだ

 

 

壬生屋。

早くお前さんを・・・この腕で飽きるほどに抱きしめさせてくれ。

 

瀬戸口は先ほどの壬生屋の抱き心地と唇の感触を反芻して思い出し

倖せに浸りながら鼻歌交じりに指揮車に向けて歩き出した。

 

 

 

 

end.

作品紹介・・・つか言い訳チック

ヘボ作5作目は・・・相変わらず素直じゃない瀬戸口です。少しずつUPして【日記deコネタ】で終わらせる筈だった物が結局長くなったので正規更新(色々文章も校正かけて変更しまくり・笑)しかし。サーチに登録しょうとしたら速舞で同タイトルの作品があってビビリましたが、瀬戸壬生だし内容も関係ないので、ま。いっか〜♪みたいな。内容はともかく流石にタイトルは被る事はありますからね。てゆーか他にタイトル思いつかなかった(笑)恋(壬生屋)に溺れている瀬戸口だから♪。

で。内容は・・・本当は壬生屋を愛したくてたまらないのに、壬生屋からのリアクションを待っている瀬戸口のお話です。でも壬生屋の事が欲しくて欲しくてたまらなくて我慢出来ずにセクハラ大魔王に変〜身!(大笑)

で。結局は他の野郎が壬生屋に告白とかしょうとして慌てて自分から告白する瀬戸口・・・・と(笑)嗚呼桜さんのSSワンパターンね(死)いいのよどーせヘボSSしか書けないも〜ん!←開き直り。むふふ・・・でもジェラC瀬戸かなり萌えですわんvvvジェラって鬼畜に走る瀬戸口とかバリ萌〜〜vvv嗚呼そーゆー瀬戸口を絵で見たい!お話で読みたい!マジ飢えですってば!!!!!誰か書いて〜!!!うにゃーーーー!ジタバタ。←取りあえず暴れてみますた(笑)あーでも本当病的に飢えています(笑)今迄ここまで嵌まった作品ないなぁ〜(笑)恐るべしGPMマジック☆つ〜か瀬戸壬生マジックね(笑)

(日記で先に読んでた方の為におまけ(笑))

瀬戸壬生【溺れる魚終了】出演者対談

 

壬「瀬戸口さんッ!女性からの告白を待つだなんて!殿方らしくありませんッ!それにわたくしの・・身体にその・・せっ・・セクハラするだなんてっ!不潔ですッ!不潔すぎます!」

ジト目で瀬戸口を睨みつける壬生屋。顔を真っ赤にしてプリプリ怒っている姿は可愛らしいv

その壬生屋を宥める様に瀬戸口

瀬「まーまー壬生屋。そう怒るなよ。可愛い顔が台なしだぞ?それに・・・1000年もお前さんを待ったんだから、俺も溜まっているんだよ色々と。」・・・特に下半身が。(ぼそり)

壬「溜まる???何が溜まるのです?」

瀬戸口の言ってる意味が分からずに訝しげに眉をひそめる壬生屋。

瀬「(照)おっ・・男には・・その・・色々あるの!!それに1000年も我慢したんだ。お前さんからの告白を待つ位の我が侭は許されるだろう?」

壬「なっ!言うに事欠いてなんて亊おっしゃるんですっ!!わたくしの中のシオネだって貴方をずっと探し求めてようやく・・・ようやく転生出来たって言うのに・・・酷い・・酷すぎます・・・シオネが可愛そうです。」

顔を手で覆って泣きだす壬生屋。

瀬「わわっスマン。泣くなよ壬生屋。俺はお前さんを愛しているから。」

壬生屋の肩をがしっと抱きしめる瀬戸口。

壬「本当ですか?・・・」

壬生屋は涙目で瀬戸口を見上げた。

瀬「嗚呼。嘘はつかない。お前さんからこっそり盗んだ(←ヲイ。笑)このお前さんの足袋にかけて誓うよ」

瀬戸口は真剣な眼差しで壬生屋の足袋に頬擦りした。

その光景を見て怒髪天突く勢いで激怒する壬生屋

壬「なっ!!!そんな物に誓うなんてっ!!!やっぱり嘘じゃないですかぁあああ〜〜〜〜瀬戸口さんの馬鹿〜〜〜〜オタンコナス〜〜〜〜!」

泣きながら壬生屋は走り去った。

瀬「壬生屋!待て!足袋は冗談だってば〜〜〜〜」

慌てて壬生屋を追いかける瀬戸口

 

その背後でブータとののみが

の「けんかはめーなのよ。なかよしはいいことなの」

ブ「ニャー!ニャニャニャー!(キッドめ!姫樣を又泣かせおって!後で灸を据えてやらねば)」

 

 

バカップル万歳(大笑)

完。

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