琥珀の月

by.櫻

 

 

「壬生屋・・・」

 

心ごと・・・まるでわたくしの魂迄溶かしてしまいそうな

貴方のその甘い声。

 

「・・・眠っているのか?・・・」

でも。

貴方が、わたくしに此の様な優しい声をかけて下さる事は

現実世界では決して・・・到底ありえなくて

夢の中のその美声にわたくしは酔いしれる。

 

「どうしてお前は・・・そんなに無防備なんだ・・・」

 

瀬戸口の指が壬生屋の髪の毛を弄ぶ様に手に取ってサラサラと指の間を流れ落ちる

わたくしの頬を壊れ物でも扱う様に触れる貴方の指先が

そっとわたくしの輪郭をナゾル。

 

そして

まるで春風の様に額に優しくふれるだけの接吻

微かな息遣い。

遠慮がちにわたくしの身体の上に覆いかぶさる心地良い重み

 

接吻は

首筋

と降りてきて

そして最後に躊躇しながらそっと唇に降りてきて。

啄ばむ様に何度も何度も接吻され

次第に・・・甘く甘くわたくしの心と身体を侵食していく。

 

暫くしてそっと唇が離れると

「壬生屋・・・」

彼の悲痛な・・・何故か泣きそうな声が

何かをためらっている様に感じられて

そしてゆるやかに胴衣の胸元を左右にはだけられ・・・

胸の谷間に口付ける

嬉しさで震えるわたくしの心。

そこで壬生屋の意識は闇に呑み込まれていった

 

 

 

 

朝目覚めると、そこは詰所の簡易ベッドの上で。

まだ夜明け前なのだろうか?外はまだ暗く、少し寝乱れた姿で壬生屋は目を覚ました。

昨日遅くまでハンガーで仕事をして疲れて詰所で横になっていたら本格的に眠ってしまった様だ。

詰所の固い簡易ベッドで寝たので身体はだるかったが、

心は幸福感で満たされていた。

 

それは・・・貴方に愛される夢を見たから。

 

夢の中の貴方は優しいのに・・・

わたくしを愛して下さるのに・・・

それなのに・・・

夢だから・・・だからこそ余計に

夢と現実の差に打ちのめされる。

 

あれは夢・・・・貴方を慕うあまりに、わたくしが夢に迄見た幻。

 

だって

現実のわたくしは彼にひどく嫌われていたから。

残酷な迄に・・・。

本当に・・・何故かわたくしは貴方に仇の様に忌み嫌われていた。

全世界の女性の味方だと言う彼に唯一例外扱いされ疎まれる存在・・・

それがわたくし。壬生屋 未央。

 

彼に嫌われる理由が全く分からなかった。

一度思い余って彼を問い詰めた事がある。

「何故わたくしを嫌うのですか?わたくし貴方に何かしたのでしょうか?理由をおっしゃって下さい」と

彼の返答は

「お前が・・・お前だからだ・・・お前の存在自体を・・・俺は許せない」

と、心が凍りそうな冷たい瞳で見つめられ・・・

あまりにも理不尽な物言いに眩暈を起こしそうだった。

 

 

嫌いになれれば、どれ程楽になれただろう。

でも

それだけは出来なくて。

他の人をいくら嫌いになれたとしても貴方だけは嫌う事など、決して出来なかった。

どんなに冷たい態度を取られても、酷い言葉で罵られても

どうしても無意識に惹かれてしまう。

視線で姿を追ってしまう。

愛したいと・・・愛されたいと、愛しくてたまらない存在。

それが貴方。瀬戸口 隆之。

 

 

壬生屋は溜息をつくと、時間もまだあったので身なりを整える為に一度アパートに帰った。

家に帰るなり、シャワーを浴びる為に脱衣所で胴衣を脱ぎ裸になるとコックを捻り熱いお湯を浴びる。

熱いお湯が眠った身体を目覚めさせてゆく。

ふと鏡に映った自分の身体の胸元に視線がいき

「跡が残っている筈もないのに・・・」

表情を曇らせて呟いたその場所は昨日の夢の中で彼が口付けてくれた箇所・・・。

愛おしそうにそ胸元を撫でる。

「夢でなく・・・現実ならば良かった・・・」

 

 

贅沢な願いなのだろうか?

彼に・・・

瀬戸口さんに優しく接して欲しい・・・せめて他の人と同じ様に・・・

無理な願いなのは百も承知だけど・・・

本当は

貴方に

愛されたい・・・

現実が無理ならば・・・

たとえそれが夢の中だとしても・・・

わたくしに夢を見させてください・・・

 

 

「あそこで眠れば・・・また・・・貴方に愛して貰える夢を見る事が出来るでしょうか・・・?」

壬生屋は儚げに微笑むと蒼い瞳から涙を零した。

 

 

そして今日も壬生屋は、ハンガーで深夜迄仕事をし、詰所のベッドに横になる。

夢の中だけでも貴方に愛される夢を見ていたい

「瀬戸・・口・・・さん」

人知れず密かに愛する者の名を口にして壬生屋は深い眠りについた。

 

 

 

 

深夜

詰所に音も立てずに歩み寄る影

簡易ベッドで寝息を立てている壬生屋を見下ろすその姿を

窓から入る月明かりが鮮明に闇の中から秀麗なその姿を浮き上がらせていった。

それは5121小隊で壬生屋 未央を唯一嫌悪する人物・・・瀬戸口 隆之だった。

「お前も懲りない奴だな・・・・」

言葉に棘はあるものの、壬生屋を見つめるその紫の瞳は慈愛に満ちていて、

普段の壬生屋に対する態度からは想像もつかない程にその瞳は優しさと愛おしさに溢れていた。

「それとも・・・・俺を誘っているのか?」

瀬戸口は簡易ベッドに腰掛けると壬生屋の頬に触れた。

掌に吸い付く様な滑らかな肌に我を忘れそうになる。

そのまま壬生屋のしなやかな肢体をかきい抱きたい衝動にかられ、ぐっと己の拳を握りしめる。

「駄目だ・・・彼奴等に知られる訳にはいかないんだ・・・こいつが狙われる・・・」

 

誰よりも愛しいのに・・・

愛したいのに愛せない複雑な思いが瀬戸口の心を雁字搦めに縛りつける。

「俺以外の奴にそんな顔を見せるんじゃないぞ・・・壬生屋。」

瀬戸口は壬生屋の唇にそっと接吻ると詰所を後にした。

夜の狩りをする為に。

 

 

 

人を守り、同胞を狩るのは

前世の女神との誓い。

そして・・・

今生の彼女の眠りを守る為に

 

瀬戸口は幻獣と戦う。

生きて、再び彼女に又会う為に・・・

舞踏服と剣鈴を纏い

絢爛たる舞踏を舞う。

 

 

 

「…まだまだだ、来いよ。」

血反吐を吐きながら瀬戸口は壮絶な笑みを浮かべ、一体、一体同胞を葬っていく。

・・・夜明けはまだ・・・遠かった。

 

end.

作品紹介・・・つか言い訳チック

暗黒思考ぐ〜るぐる〜のハツカネズミ状態の瀬戸口です。壬生屋は壬生屋で夢に現実逃避。でも夢と思っていたら実は寝ている間に瀬戸口に色々されていますが(整備で疲れ果てて起きれなかったと言う事で。笑・Hは勿論無しですよ?←されたらそりゃ起きるがな。あ。でも裏物でこの話でエロ有はいい鴨ニャ〜ぐふ。←腐)今回の話は、お互いに想い合っているのに想いがすれ違っております。壬生屋の事が好きなのに危険な目に合わせたくないが故に冷たい態度を取ってしまう瀬戸口・・・ってGPMの基本ですね(笑)いや〜本当はバレンタインネタと壬生屋の誕生日ネタの2作品を先に上げた方がいいのでしょうけど(汗)こっちが先に上がってもーたので(笑)あははのは。7割り方2作品も上がってるんですがね。肉付けで苦労するんですよ私のヘボ作。元が絵書きなので文章書くのトロイし、ヘボいのでぇ・・・(汗)生粋の文章書きさんの文才が羨ましいわぁ〜。。。それにしても書きかけのSS溜まりに溜まって只今28本目。一ケ月に2〜3本位上げていかないと(汗)ヤバイですね。だってその間にも妄想の中途半端な物が増えて行く訳だし。それにこのサイトもいつまで続くか分からないしなぁ・・・。(汗)取りあえずとっととアプしたいのは上の2つと、雪の華のループ物2つと、ロミジュリ学園祭ネタと、瀬←壬←若シリアスネタかなぁ〜?まー更新激トロなんでいつになるやら〜?ですが。つぅかうちのサイトは本当はイラストメインのサイトの筈なんですが(汗)何故にGPMはこんなにもSS書きたくなるのでしょうね?(笑)ヘボなりにまぁぼちぼち書いていけたらいいな♪と希望的観測。ヘボ作ですが感想とか頂けるとメチャ嬉しいですのでどぞツッ込んでやって下さいませ。(笑)

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