※あっちゃんの陰謀2は続き物です!未読の方は初めに『あっちゃんの陰謀1』からご覧になって下さいませ

あっちゃんの陰謀 その

 

by.櫻

 

 

朝・・・穏やかな光りがカーテンの隙間からベッドの上に降り注ぎ

壬生屋は微睡みながらその眩しさに碧い瞳を開いた。

すると目の前に優しく見つめる紫の双眸があってわたくしに優しく微笑みかける

「お早う・・・未央・・・・・」

瞼にそっと接吻て壬生屋の細い身体を抱き寄せる瀬戸口。

「愛しているよ・・・・・」

耳元で響く耳に心地よい貴方の低く甘い声。

くすぐったい様な甘く切ない気持ちがわたくしの全身の細胞を満たしてゆく・・・

「お早う御座居ます・・・隆之さん・・・。嗚呼・・・わたくしも愛しております。」

瀬戸口のたくましい身体に抱きしめられ至福の時を感じる壬生屋。

ふと、枕元の時計を見るともう起きる時間だった。

「もう起きて学校に行く準備をしないと・・・」

起き上がろうとする壬生屋の身体に瀬戸口はゆっくりと腕を絡ませた

「嫌だ・・・。未央とこのまま抱きあっていたい」

瀬戸口が駄々をこねる様に一糸纏わぬ姿の壬生屋を腕に掻き抱いてベッドの上を転がる。

クスクスと鈴が鳴る様に笑う壬生屋

「もぅ・・・昨日あんなに沢山なさったじゃないですか。」

昨日は瀬戸口に何度も愛されて身体がだるかったが、壬生屋の心は倖せに満ちあふれていた。

「ん・・・でも足りないんだ」

瀬戸口が真剣な瞳で壬生屋を見つめた。

「え?」

壬生屋が瀬戸口を見つめ返すと、徐に降りてくる甘い接吻。

「もっと未央を味わいたい・・・もっと・・・もっと隅々までお前さんを冒険したい・・・」

頬に、首筋に、唇に、啄ばむように唇が降りてきて・・・くすぐったさに身悶える壬生屋をうっとりした表情で見つめる瀬戸口。

「未央・・・」

「隆之さん・・・」

どちらともなく重なる唇・・・絡まる吐息。

貪り合う様に交わす接吻に息を乱しながら壬生屋は己の幸せを噛みしめた。

嗚呼わたくし・・・貴方の亊を本当に愛しております・・・

心から・・・

心から貴方を・・・

 

 

 

 

 

チュンチュンチュン・・・

カーテンの隙間から朝日が入り込み軒先の雀が鳴いている・・・

 

ハッ!!!!!!

壬生屋は自室の布団の上で乱れた夜着姿で覚醒した

パチパチと瞬きをして見慣れた自室の天井を、ぼ〜〜〜っと眺める。

「え・・・・?ゆ・・・め・・・???なの?」

あまりにリアルな夢だったので、暫く現実との区別がつかない壬生屋。

次第に頭の中が鮮明になってきて一気に顔が茹上った

「わ!!わたくし・・・なっ・・・ななななんて夢を!!!

いくら瀬戸口君の事が気になっているとはいえ・・・こんな破廉恥な夢をッ・・・恥ずかしいっ!!!!!」

壬生屋は顔を両手で赤くなった顔を覆い、あられもない夢を見た自分を恥じた。

そんな壬生屋を部屋の隅から見つめている視線が一つ。

壬生屋の部屋の屋根裏で芝村舞は天井板の隙間から壬生屋を見つめ苦悶の表情を浮かべた。

「未央すまぬ・・・これも、そなたの為でもあるのだ・・・」

全身黒ずくめで手にはウォークマン。ラベルには「壬生屋を煽る計画1」と記されている。

先日速水が瀬戸口の寝所に忍び込み瀬戸口に聞かせた物と同類の代物のようだった。

どうして速水ではなく舞がこんな事をやる羽目になったのかと言うと・・・

 

 

前日。速水の自宅にて

速水の手作りの晩御飯を食べてくつろいでいた舞の耳に速水のぼやきを聞いてしまったのが原因で。

「瀬戸口だけじゃ押しが足りないのかなぁ・・・」

ふ〜。と溜息をつく速水を眺め、呆れる舞。

「厚志・・・一体・・そなたは裏で何をこそこそやっておるのだ・・・」

よくぞ聞いてくれました!とばかりに瞳をキラキラ輝かせて舞に詰め寄る速水。

「舞〜〜〜〜聞いてよ〜!!!瀬戸口ってば折角煽ってあげたのにヘタレだから壬生屋さんに中々告白しないんだよぅ〜〜愛の伝道師の名も地に落ちたもんだよね」

瀬戸口の押しの弱さに憤慨する速水。

「それは・・・瀬戸口だけの問題ではあるまい・・・未央の気持ちも関係あるであろうし・・む?まさか未央にもあの例の事をするのか?」

舞の『例の事』という単語に速水の眉がピクリと反応する。

『やっぱり知ってたんだね舞・・・』

瀬戸口に例の物を聞かせたその日、やたら舞がよそよそしかったので、もしや?とは思っていた速水であった。

日頃、舞に盗聴されているのは分かっていたので盗聴器は全部場所を把握していた筈なのに・・

『今度はどこに仕掛けられたのかなぁ・・・』

表面上は取り繕った笑顔で内心は自分が知らない盗聴器の存在に冷や汗だらだらで穏やかではない。

「まぁ・・・瀬戸口煽っても駄目なら・・次は壬生屋さんかな・・・」

「ほどほどにするが良い・・・間違っても他人に見つからぬ様にな」

勝手にしろと言わんばかりの舞の態度に速水は仏頂面になった。

僕は舞のとの☆愛☆の為に頑張っているのに・・・と。不機嫌になった速水は舞の怒りを煽る様に続けた

「ふ〜〜〜〜〜ん。じゃあ舞は僕が夜中に壬生屋さんの部屋に忍び込んでもいいって言うんだね?」

ぴくり。と舞は瞬時に表情を硬くする。恋人が他意はないにせよ別の女性の部屋に行くのだ。嬉しい筈はない。

「み・・・未央と瀬戸口の仲を取り持つ為なのであろう?ならば仕方なかろう」

取り繕う様にぎこちなく微笑もうとする舞

「でも・・・僕、壬生屋さんの寝姿覗く事になるよ?」

「む・・・」

舞の蟀谷にピシィと怒りマークが入る・・・

「壬生屋さん裸で寝てたりしたら・・・その姿にムラムラしちゃって襲っちゃうかも?」

舞がちゃぶ台をどん!と叩き立ち上がった!台の上の湯飲みが飛び上がる

「ばっ・・・馬鹿者!!!なにを言うか厚志!!!!浮気は・・ゆ・・許さんぞ!」

顔を赤く染め眉根を吊り上げ激怒する舞。

『ああっ僕って舞に愛されてるなぁ〜』と馬鹿げた亊を考えながら速水は舞の反応ににっこりと微笑み

「じゃあ舞も手伝ってね☆」

と、ニコニコ顔で背後からごそごそとウォークマンを取りだす速水。

「は?」

速水の提案に鳩が豆鉄砲くらった様に蓬けた顔をする舞

「は?じゃないでしょ?壬生屋さんは舞が担当だからね。僕を女の子の部屋に入れたくないんだったら僕の代わりに舞に頑張って貰わないと!」

速水がウキウキと舞にやり方の手順を説明しようとしていたら・・・

舞はあらぬ想像をしてしまった。

もしかして目の前にいるこの男は・・・ぽややんな顔をして実は自分にも『何か』をしたのではないか?と・・・

疑いの眼差しで速水を見つめる舞。

「厚志・・・そなたまさか・・・私にも・・・」

「ん?なぁに舞?僕が舞にそんな亊する筈ないでしょ?それとも舞の僕への愛は偽りなの?」

にこやかに微笑む速水。この笑顔が曲者なのだが・・・

「そんな馬鹿な亊があるか!」

憤慨して即座に否定する舞を抱き寄せて速水は微笑む。

「あっ・・・馬鹿っ・・何をっ・・」

「でしょう?僕はこの世界で舞だけを愛してるよvvv」

速水は舞の額にやさしく口付けた。途端に頬を赤くして瞳を潤ませる舞。

「厚志・・・」

ピンク色の雰囲気に染まる速水の部屋。

速水は舞の身体を緩やかに押し倒した。

そんなまどろっこしい事は誓ってやってないが、舞から告白される様には仕向けた黒速水ではあった・・・(笑)

 

 

 

 

 

 

所変わって本日、早朝。

・・・学校に向かう足取りが重い壬生屋。

気がつくと知らず溜息ばかりが出てしまい・・・頬の火照りがなかなか治まらなかった。

「わたくし・・・瀬戸口君にどんな顔をしてお会いすれば良いのでしょう・・・」

悩みながら壬生屋が学校に登校すると、珍しく瀬戸口が教室に一番に来ており、その姿を見て入口前で固まる壬生屋。

頬が次第に赤くなってゆく。

瀬戸口も心ここに在らずといった感じで窓際で物憂げに遠くを見つめている。

躊躇いながら壬生屋はぎこちなく瀬戸口に声をかけた

「お・・・お早う御座居ます・・・瀬戸口君。お早いんですね・・・」

壬生屋に声を掛けられ緊張からか一瞬身を硬くする瀬戸口。こちらもぎこちない返事を返す

「ああ・・・お早う。壬生屋・・・お前さんはいつも通り・・早いんだな。」

一瞬お互いの視線が熱く絡み合い二人してボンと頬を赤く染め即座にお互いに視線を反らしてしまう。

『なっ・・・・壬生屋の顔がマトモに見れない!!!』

瀬戸口は一昨日見た夢(※詳しくはあっちゃんの陰謀1参照(要必読!笑))の所為でそれからずっと壬生屋の事を意識しまくっていた。

そういう壬生屋も今朝見た夢の所為で瀬戸口の事を意識しまくっていた。

『どっ・・・・どうしましょう瀬戸口君を見ると今朝見た夢が・・・・ああっ駄目よ未央!不潔よ・・・不潔ッ!!!』

首をブンブン振って妄想を頭の中から追い出そうとした壬生屋だったが、本人を目の前にして夢の内容が瞬間的に鮮明に蘇ってしまう!!!

『もっと未央を味わいたい・・・もっと・・・もっと隅々までお前さんを冒険したい・・・』

夢の中の瀬戸口の蕩けるような甘い声が壬生屋の頭の中でリフレインする

『きゃああああああああああああ////////////〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』(壬生屋の心の声)

恥ずかしさに顔を真っ赤にして卒倒しそうになり蹌踉ける壬生屋。

その倒れかけた壬生屋に気がついて慌てて駆け寄り抱き止める瀬戸口

「おいっ!どうした?壬生屋!大丈夫か!?」

「え・・・・???」

壬生屋がハッと気がつくと瀬戸口に抱きしめられていて・・・

瀬戸口も咄嗟にした行動ではあったが壬生屋を抱きしめている現在の自分の状況に驚き固まる

「せ・・・瀬戸口君////////」

「み・・・壬生屋////////」

至近距離のお互いの顔に心臓が早鐘を打ち。

ごくり…と緊張した二人の咽が鳴った。

「壬生屋・・・」

瀬戸口が壬生屋を抱きしめる手に力を込めて・・・

「あ・・・・」

壬生屋が震えながら瞳を閉じ・・・

無意識にお互いの距離が縮まっていき・・・・

お互いの唇迄あと1cmという所で・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはよーーーーーーーーー♪」

 

 

何と!?いつもは遅刻ギリギリの新井木が珍しく朝早く登校して来た

 

 

ガタガタッ!ずざざざざざざざざっっ!!!

 

 

 

目にも止まらぬ早さで教室のすみっこに勢い良く離れる二人。

赤良様に挙動不審な瀬戸口と壬生屋の態度を見て首をかしげる新井木。

「ん?二人ともどうしたのぉ???又喧嘩ぁ???」

的外れな感想を洩らす新井木に

『おーのーれー!!!!!』

瀬戸口と壬生屋は顔を真っ赤にして二人一緒になって新井木を睨んだ。

そして新井木を睨んだ後で己の気持ちに戸惑う二人。

『え?わ・・わたくしは・・・』

『お・・・俺は一体何を...』

離れた位置にいるお互いを遠目で見つめ・・・そして又視線を逸らす。

見ていてじれったい程に初心な二人であった。

しかし実は・・・二人のいい雰囲気を邪魔した新井木を『おのれ〜』と、睨む視線が他にもあった。

教室の外から二人の動向を伺い覗いていた全身黒タイツの速水と舞だ。

「あと一歩と言う所で・・・新井木めぇ〜〜〜!私の苦労が水の泡ではないか!」

拳を握りしめ小声で憤慨する舞。

「でしょう?結構見てて苛々するんだよあの二人。じれったいんだよね〜」

速水が苦笑いして舞を見る。

「厚志!決めたぞ!私はあの二人を何が何でもくっつけるぞ!」

鼻息荒く舞は立ち上がる

「はいはい♪舞ならそう言うと思ったよvvv頑張ろうネ!舞vvv」

「厚志・・・・」

「舞vvv」

恋人同士の二人が見つめあったのでHな雰囲気になる。

「ば・・馬鹿者!こ・・・このような場所と格好で欲情するでない!」

「どんな格好の舞も可愛いし、愛しているよvvv」

「厚志・・・vv」

二人がいい雰囲気になった所に・・・突然背後から

「速水…芝村…お前らそんな格好で何をしているんだ?」

いつの間にか若宮が二人の背後に立っていた様で、二人の怪しい格好と行動を見て呆然としている。

『おーのーれー!!!!!』

Hな雰囲気を邪魔されて、二人は若宮に鬼の形相で振り向いた!

「す・・スマン。邪魔するつもりはなかったんだが・・・」

二人の迫力に負け何故か条件反射で謝る若宮。

「若宮。この件に関しては他言無用だ」

舞が毅然と言い放つ

「ご免ね若宮君。僕達の亊は皆に内緒にしておいて」

舞の後に続く様に若宮に言う速水

そして、歩腹前進でそそくさと隠れる様に立ち去る怪しい全身黒タイツの二人。

それを口をあんぐり開けてポカーンと見送る若宮。

二人の姿が視界から消え去った後で、若宮は慌てて飛んでた意識を取り戻す

「変な奴らだな・・・・新手のコントか????」

若宮は一人呟き首を傾げた。

かくして本気になった芝村コンビの『瀬戸口壬生屋ラブラブ化計画』が秘密裏?に動き出した。

お昼になり速水は速攻で瀬戸口を誘う

「瀬戸口〜。一緒にお弁当食べようよ?」

「ああ?。構わないぞ速水」

「あ。俺も〜」

と言おうとする滝川をキッ!睨んで牽制する速水。

「なっ・・・何だよ速水〜俺達親友だろう?」

「今日だけは駄ー目。僕瀬戸口と二人きりでご飯食べたいんだ♪」

瀬戸口の腕を掴んでラブラブぶりを見せつける速水。

「速水・・・お前さんどうしたんだ?」

いつも自分がぎゅーしている事を棚上げして速水の豹変ぶりに引く瀬戸口。

「お前ら・・・そんな関係だったの?」

よからぬ妄想をして顔面を青くする滝川。

 

 

そして舞は壬生屋を誘う。

「未央。一緒にお弁当を食べぬか?」

「はい。お供します」

にこやかに微笑む壬生屋。

「まいちゃん〜ののみもぉ〜」

ののみが舞の腰に飛びついた!慌ててののみを見つめる舞。

「のっ・・ののみっ!よっ・・芳野先生がさっきお前を呼んでいたぞ!」

「ほぇ???せんせぇが???〜わかったなの〜」

パタパタと教室を出ていくののみに心の中で謝罪する舞。

『ののみ許せ・・・これも未央の為なのだ・・』

そして計画通りに屋上でかち合う4人。

既に座って弁当を広げていた舞と壬生屋は階段を上がって来た速水と瀬戸口に視線を向けた。

「あ・・・厚志。奇遇だな」

「本当だねぇ〜舞。以心伝心かなぁ〜」

恋人同士の二人が偶然に屋上でかち合うなんざ赤良様に嘘臭い

『お前さんら、わざとらしいぞ・・・ま、別に俺は構わないが・・』

瀬戸口は内心呆れながらそう思いつつ、そっと舞の隣に座っている壬生屋に視線を向けた。

壬生屋も瀬戸口を見ていた様で、互いに赤くなり慌てて視線を反らす二人。

そんな初々しい二人を見て

『これだから前に進まないんだよねぇ・・・』

速水がそんな事を頭の中で考えながら苦笑いをする。

取りあえず気を取り直して弁当を囲む4人。

舞の隣には速水が座り速水の隣には瀬戸口、その隣には壬生屋と円陣を組む感じで座った。

弁当を食べだして速水は唐揚げを箸で掴み舞の目の前に差し出し・・・

「はい。舞あーんして?」

とにこやかに舞に微笑む速水。

勿論人前でそんな亊をされ恥ずかしさで赤くなる舞

「あっ・・・厚志・・一体何を!?」

動揺したのか声も裏返っている。

『しーっこれも作戦なんだから』

速水が舞にパチパチとウィンクして目配せをする。

『そ・・・そうなのか?』

こくこくと頷くと舞は口を開けて速水の唐揚げを頬張った。

 

 

壬生屋は目のやり場に困ってはいるものの二人の仲むつまじい姿を羨ましそうに見つめている。

『筒抜けなんだがなぁ・・・』

瀬戸口はそんなイチャラブっぷりの二人を見て頭を掻きながら溜息をついた。

どうやら速水達は赤良様に俺と壬生屋の二人を煽っている様だ。

「お前さんら独り身の俺達の目の前でそんなイチャつくなよ・・・」

瀬戸口が溜息まじりに呟くと

「羨ましいのか?瀬戸口。ならばお主らも真似すればよかろう?」

舞は立ち上がり、赤くなりつつ胸をはって言い放った。

無理して言ってるのがバレバレの見ていて痛々しい可愛らしい舞(笑)

「オイオイ・・真似って・・なぁ・・・」

瀬戸口は溜息をついた。

すると速水が壬生屋の弁当をサッと覗き込みおかずを指さす

「ホラ。瀬戸口ってば出汁巻卵好きじゃない?壬生屋さんの出汁巻卵美味しそうだよ?食べさせて貰ったら?」

とニコニコ顔でとんでもない亊を言い出した。

「・・・お前さんらなぁ〜〜〜壬生屋が困っているだろうが・・・」

瀬戸口が強引な速水を制止しようとしたら

「こ・・・困りません!!!」

突然意を決した様に叫ぶ壬生屋。

「み・・壬生屋?」

その勢いに圧倒される瀬戸口

「あの・・・これ・・お口に合わないかもしれませんが・・・」

壬生屋が箸で出汁巻卵焼きを挟んで瀬戸口の方に差し出す。手が震えている

「・・・・。」

瀬戸口は暫し無言で考え込み少し頬を赤くしながら壬生屋の出汁巻卵をパクリと食べた。

瞳を閉じて味わっている瀬戸口とその瀬戸口の反応を心配そうに見つめる壬生屋。

そして瀬戸口はごくりと飲み込み壬生屋に微笑みかけた

「・・・美味い!」

「本当ですか?」

ぱぁあっvvvと表情を明るくする壬生屋に、

「嗚呼。お前さんはいい嫁さんになるよ」

瀬戸口は優しく微笑んだ

すると横から茶化す様に速水が

「壬生屋さん♪瀬戸口がお嫁さんに貰ってあげるってさ!」

ボンッと赤く茹上る壬生屋

「ばっ・・・馬鹿野郎////!速水お前さん何を・・・」

「え?嫌なの?壬生屋さんの事嫌いなの?」

畳みかける様に返事を迫る速水にたじたじの瀬戸口。

「ば・・馬鹿を言え・・・嫌いな訳・・ないだろう・・・」

真っ赤に茹で上がる瀬戸口。愛の伝道師の名も地に落ちそうだ

「じゃあ・・・好きなの?」

速水が瀬戸口の顔を下から覗き込む様にキョトンとした顔で見つめる

「それは・・・」

言葉に詰まる瀬戸口

「そんな事は今はどうでもいいだろ!」

「あ・・・」

瀬戸口が照れ隠しに言った言葉を拒絶と勘違いした壬生屋は、突然その場から立ち上がり走り去った!

「み…壬生屋!?」

壬生屋の行動に驚く瀬戸口に速水は咎める様な口調で瀬戸口を諭す。

「あれじゃあ壬生屋さん瀬戸口に嫌われているって勘違いするよ?」

「あ・・・・・!!!。お・・・俺はそんなつもりじゃ・・・」

自分の言葉に傷つき壬生屋が走り去った事に気がつき青くなる瀬戸口。

「瀬戸口。未央を追いかけるが良い。早く捕まえぬと他の男に攫われるぞ?」

舞の追い討ちをかけるその言葉に弾かれる様に立ち上がり壬生屋の後を追いかけ始める瀬戸口。

瀬戸口が壬生屋の後を追い始めて互いに頷いて立ち上がる速水と舞。

壬生屋の後を追い始めて数分と立たない内に壬生屋に追いつく瀬戸口。

壬生屋は指揮車の影で嗚咽を洩らして泣いていた。

瀬戸口は静かに壬生屋に近づき声をかける。

「壬生屋・・・!」

壬生屋の肩がピクリと反応する。

「!!!いや・・・来ないで・・・」

瀬戸口は背後から壬生屋の肩を掴み、そっと自分の方に振り向かせる

「あ・・・見ないで・・・下さい」

壬生屋の蒼い瞳は涙で泣き濡れていた。長い睫毛からキラキラと光る雫が溢れ落ちる

俺の所為だ・・・瀬戸口の胸が締めつけられ・・・。瀬戸口は衝動的に壬生屋を抱きしめた。

「あっ・・・」

「すまない・・・。俺はさっき・・・嘘をついた」

「え・・・?」

「“どうでも良くはなかった”のに・・・本当は“大事なんだ”・・・お前さんが・・・」

「瀬戸口君・・・?」

「まいったな・・・何から話せばいいんだ・・・愛の伝道師の名も返上だな」

瀬戸口は真剣な眼差しで壬生屋を見つめ、壬生屋の唇にそっと接吻けた。

唇を離して壬生屋を見つめ

「壬生屋・・・お前さんが好きだ・・・その・・・付きあって欲しい・・・」

「わ・・・わたくしは・・ずっと貴方を・・・お・・慕いして・・っ・・・」

「壬生屋・・・」

「瀬戸口君・・・」

瀬戸口が壬生屋の身体を抱き寄せて・・・

重なり合うシルエット

 

 

 

 

 

その二人の様子を校舎の陰から覗いていた速水と舞は抱きあう二人を見て思わず笑顔で顔を見合わせた。

「ようやく上手く行った様だな。厚志」

「舞も一緒に頑張ってくれたからだよ」

舞はふと真顔になり腕を組んで考えた。

「そうか・・・フム・・・厚志がやっていた亊は皆を幸せにする為だったのだな・・・」

嬉しそうに顔を綻ばせる舞。

「ええっ?・・・ん〜まぁね・・・」

言葉を濁す速水。

「皆が幸せになれば我らも嬉しいからな・・・」

舞は一人感心した様にコクコクと何度も頷いた。

他人の幸福の為に尽力したと思われ、速水は舞から視線を外してこっそりと腹黒く考えた。

本当は舞に少しでも気がある寄りつきそうな瀬戸口を排除しょうと、他に瀬戸口に気がありそうな壬生屋とくっつけただけなのだが・・・

厚志は舞に振り返りにこやかに微笑む

「勿論だよ舞vvv小隊の皆には幸せになって欲しいからね☆☆☆」

魅力Sの笑顔をキラキラと振りまく速水。

「流石我カダヤだ。厚志、お前を誇りに思うぞ!」

「えへへ〜そぉ?照れちゃうな〜」

と照れている速水を見て、うむ!と舞は頷き、

「・・・では厚志!!!・・次だ!!!」

と腰に手を当てハンガーの方を指さした

「へ?つ・・・次???・・・ま・・舞???」

舞の言葉の意味が分からず慌てる速水。

「次は差し当たって遠坂と田辺辺りが良いと思うのだが・・・どうだろう?」

瞳を輝かせ微笑む舞に嫌な予感がして寒けが走る速水君。

「いやぁ・・・どうだろうって・・舞あのね?そんな亊してたら僕達のイチャつく時間が・・・」

舞との時間を削って迄そんな面倒は背負い込みたくない速水は慌てた

が。やる気満々の舞を誰も止める亊は・・・例え速水ですら出来ない(笑)

「皆を幸せにするのだろう?我らが頑張らねばどうする!」

やる気を見せない速水に苛立つ舞姫。

「やーホラ余計なお節介って亊もあるし・・・ねっ?」

冷汗だらだらの厚志君。心なしか目が死んだ魚の様ですよ?。

そんな速水にハッパをかける様に

「厚志!行くぞ!遅れるでない!」

舞は速水に向かって男前に微笑みハンガーに向けて走り出した。

「ええっ!?舞っ〜!舞ってばぁああ!!!」

慌てて舞の後を追う速水。

 

 

 

その後、瀬戸口と壬生屋は次の日から目も当てられない様なイチャラブっぷりで・・・

本田のマシンガンが大活躍する亊に・・・

速水と舞の二人は5121小隊キューピッド戦隊を結成して奥様戦隊と張りあっていたとか何とかは・・・

又別のお話。(笑)

 

 

end.

 

作品紹介・・・つか言い訳チック

ヘボ作15作目は・・・実はこの作品は前回の『あっちゃんの陰謀1』を書いてからすぐに書いていた作品なのですが(だから去年の10月頃7割完成してたんですが)肉付け迄に1年近くかかってしまいました(大笑)ええ。私のSSの引出しはそんな書きかけの作品が山の様なんでホトホト困っております(笑)今回のこの話も瀬戸口×壬生屋というよりは速水&芝村大活躍な話ですけどね(笑)まぁタイトルが“あっちゃん”ですし☆・・・一応この『あっちゃんの陰謀』シリーズはこれで終わりですが、反響いいなら又続きを書く鴨です(笑)あっちゃんの陰謀3に続く?(嘘です(笑))続くにしても更に腹黒あっちゃんになりそーな予感(笑)(だから続きませんてば(笑))まぁ、反響多ければ本当に続けるかもしれませんが(笑)ではでは楽しんで頂ければ幸いですvvv